単騎で読みがズバリ
相手は名うての近畿勢に、ライン3車の厚みがある南関ライン、そして松浦悠士とタッグを組む“超新星”の太田海也。ホームでの声援を一身に受ける北津留翼もいたが、その8人をまとめた負かしたのは、関東からただ一人、ファイナルに勝ち上がった眞杉匠だった。
「(優勝は)自分でもビックリしています。単騎は好きなので、単騎で優勝ができたのはうれしいですね」
こう言っていつも通り、人懐っこい笑みを浮かべた眞杉の読みがズバリと当たった。
「前にも深谷(知広)さんと松井(宏佑)さんはこういう先行をしていたんじゃないかと。それで信じて付いていました」
脇本雄太に併せ込まれた深谷が後方まで下げても、スイッチすることなく南関ラインを前に見る9番手。そこから巻き返した深谷が主導権を握ると、思惑通り4番手を手に入れた。
「ジャンでは(別線が後ろから)来る感じがなくて、(最終)ホーム過ぎに来たのがわかった。それで(バックの)直線で1車追い上げようと。理想的な勝負でした」
8番手からスパートした脇本だが、いつものような加速がない。あおりもあった脇本が不発になって、今度は真後ろから太田がまくってくる。眞杉は俊敏に前に踏んで簗田一輝に並ぶと、番手まくりに出た松井をスムーズに追走。外の太田を軽く弾いて、同期の松井をロックオンして、直線を迎えた。
「(松井との直線の)そこの勝負でした。(交わしての1着で)めちゃくちゃうれしかったです」
初戴冠となった8月のオールスターでは、吉田拓矢がラインの先頭を務めて、後ろには地元の平原康多と武藤龍生。ラインの要、番手を回る重責もあった。
「(オールスターの決勝の)あの時はすごく緊張していたけど、今日は考えてもなるようにしかならない。いい意味で気楽に走れたのが、結果につながったのかなと」
計ったよう松井を交わしてゴール。オールスターとは違い数的有利はなかったが、眞杉が2度目のG1優勝を遂げた。
「(2度目のG1優勝で)来年に向けて自信をもって(S級S班の)赤パンをはけるように。(4日目の)ダイヤモンドレースみたいに単騎になったらダメダメってわけじゃなく、今回は考えて走れたのですごく収穫にもなった。それで結果もついてきたんで良かった」
同県の“リビングレジェンド”、16回のG1優勝を誇る神山雄一郎に、また一歩、近づいたG1勝利でもあった。
「今回はただ流れが向いただけなんで。やっぱりダイヤモンドレースを走ってみてもそうですし、脚力差がまだまだあると思う。(S級S班のユニフォームを)脱がないように、また練習するだけです。神山さんは16回ですか。じゃあ、あと14回で並びますね(笑)」
これ以上ない加速をつけて、地元地区の立川グランプリへ。単騎になりそうなグランプリだが、もう心配はいらない。神山さえも成し遂げていない栃木勢から初のグランプリ制覇にまっしぐらだ。
深谷が敢然とレースを支配して、流れは南関勢。番手の松井宏佑は、最終バック手前からまくって出たが、後位には簗田から奪った眞杉がいた。ゴール線では、眞杉に半車輪交わされタイトル獲りはならなかった。
「悔しいです。ダメですね。(別線の巻き返しが)早めならけん制して、少しでもラインが有利と考えていた。深谷さんが掛かっていました。後ろがもたついていたので、見えてから引きつけてからでした。最後の最後、自分の力は出し切れた。来年こそタイトルを獲れるように練習をしたい。今回は自分の成長を感じるシリーズだった。来年はとりこぼしがないように、全部の特別競輪(G1)で自分の納得できるように優勝を目指したい」
5番手まくりの太田が合わされて、最終2センターでは眞杉に弾かれていっぱい。太田に委ねた松浦悠士は、簗田と太田の間の狭いコースから差し脚を伸ばしたが3着まで。
「深谷さんの駆け方は緩急をつけながらでうまかった。(太田)海也がもう少し自信をもっていければ。(タイミングとしては最終)ホームから1コーナーですか。(グランプリに)だいぶ勝負になるデキです。これから上積みもつくれそうです」