ラストG1で地元GPチケット獲得
伊豆のベロドロームで行われた競技のジャパントラックカップから、中1日の強行ローテーション。
「前検日に入った時点では、初日に当日欠場になるなっていうのも覚悟したというか。8割方、走ることができないくらいだった」
体調を崩したなかで迎えたラストG1。ナショナルチームとの兼ね合いでガールズケイリンでの出走機会が限られている梅川風子は、当然ながら獲得賞金ランクでは圏外。4度目のグランプリ出場には新設されたこの女子王座戦を優勝するしかなかったが、到底、優勝が狙えるコンディションではなかった。
「体力が回復してきて、日に日に良くはなってきていた。なんとか自分でもちこたえられたのは、気持ちの面では良かったです」
何でかっていう感じと、2日間を振り返った梅川だったが、初日予選、準決を連勝。ナショナルチームの仲間であり、ライバルでもある佐藤水菜も無傷で勝ち上がり、梅川には佐藤の隣りの2番車が巡ってきた。
「号砲が鳴る瞬間にSで誰も出なければどうしようという不安にかられました。ならばちょっと佐藤選手の動きを見てから、前団の位置を取ってもいいのかなと思ってたところで、佐藤さんがSを取った。あとはその流れのままっていう感じです」
周回中は、佐藤の後ろの絶好のポジション。吉川美穂が打鐘の3コーナーで先頭に立ち、そのままペースを上げて駆ける。2番手で車間を空けた佐藤がまくりに行くと、梅川が続く。前を行くのは、オールガールズクラシックを完全V、今シリーズも圧巻の走りを見せていた佐藤。太田りゆのまくりも3番手までで、優勝争いは2人に絞られていた。
「前もこういう展開になったことがあった。その時は冷静に回れなくて(最終)3コーナーぐらいから持ち出してしまって、直線で伸びなかったことが過去に多かった。冷静に、冷静に直線までは待てたとは思う。けど、車間を空ける余裕とかは全然なかった。佐藤選手の強さも(ナショナルチームの)練習中からよくわかってますし、自分の余裕のなさがあったのかなと」
直線まで待ってから追い込んだ梅川が、チームメイトの佐藤をきっちりと交わしたところがゴール。17年のデビューから通算200勝のメモリアルでG1初制覇。地元、立川でのグランプリのプラチナチケットも獲得した。
「(完全優勝して)いまでも不思議ですね。こんなことがあるんだなというミラクルが起きてる感じです。(グランプリ出場も決まって)立川は前回のグランプリに出た時は落車してしまったので、そのリベンジは果たしたいなと思います。競技の方のネイションズカップも(来年)1月に迫ってきてますし、いま下降気味なので、ここからグランプリに向けても上げていかなきゃいけない。グランプリで上がってなければ、ネイションズカップでも勝てるとは思えないので、しっかりグランプリを獲れるような調子にまでは上げたいなと思っています」
20年以来3年ぶりのグランプリ。ナショナルチームのトレーニングもあり、次はグランプリが濃厚。グランプリの大舞台、地元のファンの声援に背中を押してもらって、再度、佐藤を倒したい。
先行策の吉川を射程圏に入れて2番手からまくった佐藤水菜が2着。2冠奪取とはならなかった。
「みんなスタートは取らないと思っていた。昨日(2日目)のレースが本当にしんどくて、坂口(楓華)さんに昨日みたいなレースをさせないように強気なレースをしようと決めていた。吉川さんの動きは私的にうれしかったです。2車なら突っ張ろうと思ったけど、1車だったので行けるタイミングで行こうと思っていた。だけど、太田さんが予想以上に早い仕掛けだったので、自分のスピードは良くなかった。こういうレースもできるっていうのは、自分にとって自信になりました」
梅川の後ろで坂口と併走になった柳原真緒は、最終バックで遅れたものの3コーナーから再度、内にもぐり込む。前の2人には及ばずも直線ではじわじわと伸びた。
「佐藤さんは後方だと思ったけど、スタートは意外だった。けん制し合って内が空くと思ったので、最後に追い込もうと思っていました。脚があれば良かったけど…。(グランプリ出場には)獲るしかない状況で、あの位置で戦えたことは良かった。けど、獲らないとグランプリはなかったので悔しいことは悔しいです。今年の前半は攻める姿勢でレースができたけど、後半に崩してからは立て直せなかった。また来年から賞金争いが始まるし、そこに向けて頑張っていきたい」