6年ぶりの兄弟ワンツーで奈良記念を連覇
近畿勢は大挙7人が決勝に進出。4人が結束して三谷竜生が完全Vを遂げた昨年とは違い、ラインは3つに分かれた。それは無傷の3連勝で勝ち上がった脇本雄太、昨年のMVPの古性優作。S級S班の2人を向こうに回して勝負することを意味していた。
「(近畿勢は)別線で力勝負っていう形だった。古性君、脇本君が気迫のあるレースをしてくれて、なんとか(展開が)向いたかなって思います」
近況も昨年11月の競輪祭、続く12月の別府記念で落車に見舞われて、今年に入っても1月の大宮記念で落車。万全のコンディションで地元記念を迎えられたわけではなかった。
「この前の全日本選抜の調子が良くなくて、地元記念はどうかなっていう不安があった。だけど、日に日に調子が良くなってきた」
脇本の番手でスタートした地元記念は、二次予選で古性、準決で脇本と再連係。離れることはなかったものの、S級S班の2人を交わせずにシリーズ未勝利で迎えた決勝だった。それだけに自力での決勝に不安を払しょくできなくても致し方なかった。が、兄、三谷将太との兄弟タッグは、三谷竜には大きな力になったに違いない。
「(ワンツーは)うれしいですね。(ゴール後に三谷将とは)やったなって、そんな感じであんまり覚えてません(笑)」
レースは8番手の脇本が、動き出した赤板過ぎから様相は一変。一気に激しくなった。すでにそこでは古性も先行の腹を固めていたようで、脇本と壮絶な踏み合い。南修二のブロックで脇本のスピードが鈍ると、今度は菅田壱道がまくる。北日本勢にかぶった三谷竜は、最終1コーナーで守澤太志を外に弾いて菅田を追いかける。そして、バックからちゅうちょすることなく、その上をまくった。
「古性君が行かなかったら、自分がそのまま思い切り行こうと思ってました。しっかりと対応できたかなと。体が勝手に動いたじゃないけど、自然に(菅田に)スイッチできた。そのまままくれたんで良かった。菅田さんを越えた時に(優勝に)いけたかなと」
まくり切った三谷竜が兄を連れ込んでのゴール。三谷兄弟の気迫が誰よりも勝った。
「落車が続いてしまって、思うような練習もできなくて調子を崩していた。けど、奈良記念に向けてはしっかりと練習することができた。3月はあっ旋が止まるけど、4月からしっかりと走れるように。(5月の)ダービー(日本選手権)を見据えてしっかりとやっていきたい。やるからにはグランプリを目指していくのは当たり前なんで」
兄弟でワンツーフィニッシュの6年前は、その後に日本選手権、高松宮記念杯、そして最後にはグランプリを獲ったMVPイヤー。そこから遠ざかっているタイトル獲りへ。充電期間を経て、三谷竜が反撃の狼煙を上げる。
弟のまくりに食い下がった三谷将太が、ゴール前で菅田を交わして地元ワンツー。
「SSの2人(古性、脇本)がすごいレースをした。(守澤をさばいて菅田にスイッチした三谷)竜生を応援してました。まくり切ってくれって。古性もまだ死んでいるわけではなかったし、そこもさすがでした。(地元記念での兄弟ワンツーは)6年ぶりですね。(今シリーズは)ファンの人たちの応援が多くて、(力をもらった)それに尽きます。これからも奈良支部の全員がお客さんに応援されるように頑張っていきます」
ワンチャンスにかけた菅田壱道は、力尽きた脇本が外に浮いて後退したその瞬間に、まくりを敢行した。
「脇本君が出切るか、付いていって緩めば仕掛けようと。(脇本が)飛んだ形になって、どっちに踏むか迷った。古性君も自分も脚を消耗していたけど、行けるところまでいこうと。バックで出切ったところでいけるかなと。自分は最大限のレースをしたけど、三谷(竜)君に力でねじ伏せられた。古性君、三谷(竜)君、脇本君とグランプリ王者を相手に最大限のレースができた」