復活の狼煙のまくりV
年始には練習中にアクシデントに見舞われて大怪我を負った。今年の初戦が2月全日本選抜。新S級S班としては苦難の船出となった眞杉匠が、ようやく本来の走りを取り戻した。
「(今年)前半戦ずっと苦しかったんですけど、ここでいい流れがもってこられたかなって。(後半戦の)あと半年しっかり頑張りたいと思います」
レースは意外な流れ。それは眞杉にとってはもそうだった。前団に構えた近畿勢は北井佑季に出られると、古性優作が郡司浩平をさばいて神奈川ライン分断策。逃げる北井の後ろには、脇本雄太が古性に迎え入れられて入った。
「(神奈川を近畿勢が分断する形になったが)そこで遅れちゃダメだと。そこだけは集中して走りました」
単騎の2人を後方に置いて、眞杉は抜かりなく中団を確保。最終ホーム手前では、外の郡司を弾いて態勢を整えた。最終ホーム過ぎに番手から脇本が出ると、眞杉は近畿コンビを射程圏に入れる3番手。2コーナーからまくったが、古性の強烈なブロックにバランスを崩してスピードが鈍るシーンもあった。が、もう一度伸びて、直線の入口で近畿勢をとらえた。
「(仕掛けが)あれ以上遅くなるとコーナーに入っちゃう。(隊列が)ほどけていいタイミングでは行けたかなと思います。(脚は)たまってはいたんですけど、(前が)すごい掛かりだった。余裕ではなかったです。だいぶキツかったです。(乗り越えられる)自信がなくても、そこ行くしかなかった。ガムシャラに踏みました」
今年の前半戦は4度のビッグで決勝進出がなく、このサマーナイトフェスティバルが今年ビッグ初優出。昨年はオールスター、競輪祭と2度のタイトルをつかんだ眞杉が、初めてつかんだG2優勝だった。
「ここにきて(今年のビッグ)初優出の初優勝は、後半につながるかなと思います。怪我は付きものなので、そこを対処していくのも含めての選手だと思う。そういう面でも前半戦は成長できたかなと思います。(G1は)あと3つ残っているし、去年優勝しているオールスターも競輪祭もある。(10月には宇都宮で)地元の共同通信社杯もあるので、しっかり攻める姿勢で残り半年頑張りたいと思います。しっかり自分のスタイルを崩さずに、(今年も)G1を勝ってグランプリを決めたいです」
今年は地元での共同通信社杯も控えているだけに、この優勝が後半戦に向けてこれ以上ない弾みになったのは間違いない。8月のオールスターでは、関東からただ一人、ドリームレースに選出。エースとして、これれからさらに大きな関東の潮流をつくりあげていく。
準決で結実できなかったラインでのワンツー。今度は吉田拓矢が懸命に食らいついて続いた。
「北井さんがスタートで前だったら、眞杉君は先行勝負するつもりだったんだと思う。スタートから南関が前じゃなかったし、脇本さんの雰囲気がいつもと違ったので行くんだなって。古性さんのけん制がすごくて、車輪を引っこ抜いてから付いていった。眞杉君はさすがですね。年下だけど尊敬します。決勝で眞杉君と連係できてうれしかった」
立ち遅れた感もあった単騎の新田祐大は、最終3コーナーから強襲するも3着まで。
「あの感じでは脇本君は絶対行くなってのがわかった。踏んでやめての繰り返しで、脚を削られていきました。レースを支配できなかったのが敗因だなって思った。まずはここに勝ち上がるまで、いい相手のなかで力比べをして、力が通用するのがわかった」