大荒れのシリーズを制したのは?
デビュー16年目でつかんだ初めての栄冠は、盟友の番手から。苦労を重ねた芦澤辰弘が、G3初制覇をついに達成した。
勝ち上がりの段階で機動型がつぶし合い、決勝戦は長島大介の先行一車。3、4番手を千葉勢が固めて、番手を回る芦澤に、ラインのお膳立てが整った。だが、地元の意地がある西村光太と、ヨコの厳しい塚本大樹が別線の相手。一筋縄ではいかないと、芦澤自身も覚悟を決めていた。
「流れの中で、位置を狙われることは絶対にあると思っていました。海老根(恵太)さんと、中村(浩士)さんが固めてくれて、ここだけは絶対に死守しないといけないと思っていました。西村君も地元だし、気持ち一本で来ると思った。それは、僕も今年地元記念の決勝を走ったんで分かる。それを上回ることができたのは、ラインの力だと思います」
赤板過ぎに上昇した長島が、誘導を降ろしてから一旦6番手に下がる。先頭の西村はペースを上げないままだが、塚本と、単騎の伏見俊昭が好位を求めて前々に踏む。隊列が凝縮されたところを、長島が打鐘4コーナーで仕掛ける。飛び付きを狙った西村は、海老根に最終バックで締め込まれて下げざるをえない。結果的に番手を無風で回った芦澤が、計ったようにゴール前で差し切った。
「長島も、行かなくてもいいタイミングで行ってくれた。同世代で、長い付き合いだし、何度も連係してきた実績があって、お互いに信頼している。千葉の先輩方も、そういうのを見て固めてくれたんだと思う。G3初優勝が、長島の後ろで嬉しいです」
夏場からなかなか体調が整い切らず、絶好調とはいかないなかの競走が続き、今節も、満身創痍だった。そのなかでも、ラインのために自分の役割を全うすることが、芦澤の身上。その想いが、ラインの結束力を高め、G3初優勝に手が届いた。
「当たり前のことですけど、自分への投資というか、ケアの機械も持っている。痛み止めも入れて走って、それでも、正直今も腰は痛い。そのなかでレースを出来たのは、仲間の力だと思います。自分も、腹を括れました。スタートは取れなかったけど、取りにいったし、自分の仕事はやりました」
22年のオールスターを最後に、G1の舞台からは遠ざかってしまった。だが、この優勝で、来年の競輪祭への出場権をゲットした。
「2、3年前は、当たり前に走っていたG1が、今は遠くに感じている。画面で見ていても、すごいレースだなって思うだけで。レースが終わって、長島が『来年は、G1でよろしくお願いします』って言ってくれた。1年後ですけど、計画をやり直して、頑張っていきたいです」
この優勝を足掛かりに、再起の道へ。もう一度心を奮い立たせて、輪界トップの舞台へと返り咲く。
カマシで粘った長島大介が2着。結果的に、4着までをラインで独占した。
「初手の併走は仕方ないかなと。少しでも抵抗してから下げようと思っていた。ラインで決めるには、(誘導を降ろして下がる)あの形かなと。ラインで決まるようにと思って。(別線は)みんな自力じゃないから、どうにかなるかなと。4日間で一番軽かった。最近、悪かったけど、結果良かったので。今日(最終日)は(先行)しないといけないかなって、変なプレッシャーはあった。抜かれなければ100点だったけど、抜かれたので95点ですね。今日の感覚を続けられるように。軽かったのは気持ちの問題かなって思う」
3着は海老根恵太。21年の日本選手権以来で、G1への出場権をゲットした。
「赤板のところは、押さえるか、戻ってくるかのどっちかでしたね。(すんなり押さえて)わざわざ粘られる必要はないですから。引いても、6番手を取れますから。駆ける人がいないし、駆けてもそうでもないだろうと。ジャン前で中村さんと車輪が接触して、重くなってしまった。そこから仕掛けてくれて、西村君に飛び付かれそうになって、そこが勝負所だなと。締めて、芦澤君が空けてくれたので入って戻ってこれた。(西村と)合うと面倒ですからね。最後は追い込む脚が残っていなかった。(3着で)良かった。嬉しいですね。競輪祭は6日制で大変そうですけど、相性の良い大会なので楽しみができました」