強さ際立つ逃げ切りV
佐藤水菜
今年最初のガールズG1を制したのは佐藤水菜。ガールズケイリン最速女王が、一番乗りでガールズグランプリへの切符を手にした。周回中に5番手の佐藤は、打鐘で誘導退避のタイミングで前に出る。1周半を駆ける覚悟が、佐藤にはあった。佐藤を梅川風子が追って、児玉碧衣は、梅川の内で併走。佐藤を脅かす機動力を持った2人の動きを、佐藤が完全にコントロールした。
「自分の力を信じられました。先行すれば逃げ切れるって思って走りました。(競技で)ある程度はああいうレースで勝ててきたので、長い距離の方が自分は勝率が高かった。決勝は、絶対1周半か、1周は行こうと思っていました」
絶妙なペース配分でレースを支配すると、外併走からまくってきた梅川も完璧に合わせ切る。ゴール前も、余力を残して力強い踏み直し。文句なしの逃げ切りだった。
「落ち着いてゴールまで持つように走れました。競技だとあの展開は多いですし、私はレースも見えているので、冷静に走れました。梅川さんに、バックでまくってこない方が良いよと思ってたんですけど、仕掛けてきたので全力で合わせました。一番の力試しができるかたちで優勝できて良かったです」
準決は、まさかの2着だった。まくりのコースを塞がれて、仕掛けのタイミングが遅れたことが敗因だった。その敗戦が、気持ちを奮い立たせた。
「もうまくりとかはやりたくないですね。昨日(2日目)みたいになるのが一番いやなので。やるせない気持ちというか、こういうこともあるんだなって。自分が経験したことのない負けパターンだったので。車券を外してしまって申し訳ない気持ちもあるんですけど、自分の成長が見えるので。すごくなんだろう…。久々に競輪が楽しいって思えて。競技は結構、負けて悔しい、楽しいって思えて走れるから、どんどん意欲があがったんです。けど、最近のガールズケイリンは、どこにモチベーションをっていうのがあった。でも、ああいう負けをして、すごく自分にとって成長が見えたレースになった。絶対にああいうことがないように。ああいう展開もあるって念頭において走れたのは、今後の人生に大きな影響を与えました」
準決の悪夢を振り払うかのような完勝劇。2年振り2度目のオールガールズクラシック制覇で、改めて世界レベルの実力を示した。昨年パリオリンピックが終わって、今年はG1への本格参戦を予定している。幸先よく、最初のG1を制した。目指すは、ガールズケイリン前人未到の領域だ。
「(グランプリ出場は)最低条件。今年G1を全部獲るって公言していたので。目標は、脇本(雄太)さんと同じ年に、グランプリスラムを獲ることなので。パールカップには、まだ出たことがないので、めちゃくちゃ楽しみなんです。今回ガールズケイリンを走って、危機感がありました。もっと強くならないとっていうのと、軽ギアにもっと対応しないと」
誰も追いつけないスピードと、どこからでも仕掛けられる気持ちの強さを、今節でまざまざと見せつけた。けれども、まだまだ成長過程。今よりももっと強い、想像もできないほど強いサトミナを、ファンは待っている。
4コーナーでようやく外が開けた児玉碧衣だったが、佐藤に詰め寄ることはできなかった。オールガールズクラシック連覇はならずで、悔しさが残る。
「何パターンか考えてはいましたけど、(併走になって)ああなるなって思っていましたし、想定はしていました。ああなったら4コーナー勝負だと思ったんですけど、差し脚がないんで。サトミナ(佐藤水菜)もペースにずっと入れていたので。今回は1週間練習してきてここまでこれたので。6月の岸和田はもっと走れるんじゃないかなって。(気持ち的にも)6月に向けて頑張りたいなっていまのところ思えているので。次は負けないように」
外併走からまくりを狙った梅川風子だったが、佐藤に力負けで3着。
「(周回中に)サトミナがきたので。番手が欲しいなって。プランにはなかったんですけど、いいプランだと思って。でも、逆にうまくやられましたね。(組み立てが)難しかったというより、600前からいくサトミナの勇気がすごい。そこがスピードよりも上回っていたと思う。勝ちに徹する以上、自分はあそこ(打鐘付近)からは踏めないので。正直、サトミナがもっとペースを上げてくれたらもう少し回せていたと思うんですけど。変なところにいたんで行くしかないなって。(今シリーズの状態は)めちゃくちゃいいっていうわけじゃなかったんですけど。勇気が足りなかったですね。普通開催でも勇気を持って。ああいう決して早いピッチじゃなくても、誰も行きたくならないようなペースっていうのは勉強になりました」