稀に見るサバイバル戦で完全優勝
神山拓弥
あっと驚く4連勝。神山拓弥が、巡ってきたチャンスを1つも取りこぼすことなく、完全Vを決めた。
眞杉匠を先頭に、北日本勢まで加勢して4車のラインが出来上がった。眞杉の先行一車とも言える構成だが、相手は輪界トップのオールラウンダー古性優作。神山が「古性君の飛び付きだけが怖かった」と言ったように、この構成だからこそ、一瞬たりとも気が抜けない戦いだった。
「車番的にも、後ろ攻めにはなるだろうなと。もう、眞杉は超一流の自力選手なんで、判断も、要所の反応も、仕掛け所も良かった。すごい気迫で先行してくれて、古性君に飛び付かせないように行ってくれた気持ちが嬉しかった。さすがタイトルホルダーだなっていう走りでした。飛び付かれずに出切れたのがすべてだったと思います」
赤板2コーナーからカマした眞杉のスピードが良く、前団に構えた古性も5番手に下げ切るしかない。古性が最終2コーナー過ぎから仕掛けてくると、神山は3コーナーでブロック。フカして駆けた眞杉はさすがに苦しく、神山は返す刀で前に踏み込んだ。四日市の長い直線を、一心不乱に踏んで、後続を退けてゴール。まさに全力を出し切った。
「古性君を張って戻ったときに、(眞杉が)タレてきていた。昨日(3日目)と同じ感じで踏みました。余裕はなくて、4コーナーからめちゃくちゃ長く感じました。誰も来ないでくれと祈りながら踏んでましたよ」
19年大宮記念以来、5度目のG3優勝は、本人も驚く完全優勝。関東の機動型が作ってくれたチャンスを、4日間無駄にしなかった。「恵まれた」と話すが、G1顔負けの豪華メンバーがそろった今節は、恵まれだけで勝てるような開催ではなかった。同地区の仲間に感謝しつつも、確かな手ごたえを口にした。
「連日、森田(優弥)や、(鈴木)竜士や、眞杉が頑張ってくれて展開が向いた。(完全優勝は)僕が一番びっくりしてます。ここ(の開催)に来る前に、眞杉と一緒に街道でもがいた感じが良かった。それがかみ合ったのかなって思います。(前回から)中3日で脚力が上がることはないけど、眞杉と練習できて良い感覚がつかめた。眞杉はSSなんで、番手はなかなか回れない。少ないチャンスで結果を出せて良かったです。このメンバーで優勝できたことは、自信にもなりますね」
眞杉や、吉田拓矢らの若手を中心に、関東勢は間違いなく勢いづいている。神山も、まだまだ老け込むような時期ではない。若手とともに切磋琢磨し、関東の一員としてビッグレースでの戦いに挑む。
単騎の山田英明は、最終周回7番手の位置取り。大阪勢の仕掛けを追うと、2センターで空いた中のコースを踏む。稲川翔を外に張ってコースをこじ開け、2着に突っ込んだ。
「(初手のイメージとしては)取れたところからっていう感じでしたけど、中団が取れた。山口(拳矢)君が突っ張るかと思ったら引いたんで、バックを踏むくらいならと思って内からいきました。(最終バックからは)あおりがすごかったですね。もっと早く行ってもとは思っていましたけど、我慢をした。最後は(コースが)空いたんで。もっと早く(コースに入って)行っていればっていうのはありましたけど、危ないかなと思った」
古性の仕掛けに乗った*稲川翔は、3コーナーで外の山口拳矢をブロック。内から山田に当たられて、直線は伸び切れず3着だった。
「(眞杉がカマしてきたときに)なにもすることができなかった。敗因の半分以上は僕にあります。1個タイミングがずれて、(ブロックするタイミングを)逃してしまった。そこがすべてですね。古性は(神山にブロックされていたが)あそこからが強い選手なので、自分は被らないようにと思って張ったんですけど、遅いですよね。(山田に間を割られてしまったことは)あんなところで空けてしまっている自分が悪い。もっと信頼してもらえる選手になれるように頑張ります」