浅井康を中心に迎え撃つ中部勢
昨年の伊東から記念を3連覇して反撃の狼煙を上げたはずの深谷知広が、全日本選抜では6696着。シリーズを通して精彩を欠き、まさかの2次予選敗退だった。その流れが中部勢に連鎖したかのように、準決では竹内雄作が主導権を奪えず金子貴志と共倒れ。そしてグランプリチャンプの浅井康太までもが不覚を取り、全日本選抜のファイナリストに中部勢の名前はひとりとしてなかった。多くのファンが予想だにせず脆さを露呈した中部勢だったが、地元地区の大一番、ダービーこそはファンが求めるVストーリーを結実させる。
昨年のグランプリ(GP)を単騎で制した浅井だが、ラインを重んじ結束力を大切にすることでは人一倍。全日本選抜でも初日特選、2日目スタールビー賞と竹内を番手でアシストするシーンが目を引いた。シリーズで初めてラインの先頭での戦いとなった最終日は、圧巻のまくりで金子とワンツー。「今年は前でやってまだ負けていない」と振り返ったように、続く奈良記念を1611着。アクシデントに見舞われた2日目の優秀以外は、白星を挙げ優勝へとつなげた。自力を駆使した走りには何ら不安はないが、今シリーズはまた深谷、竹内がいて番手での比重が大きくなりそうだ。高い判断力と柔軟な立ち回りで、中部地区にシリーズの流れを引き込みV争いを有利に運ぶ。なかなかG1で結果を残せない深谷が、地元のダービーまでにどこまで立て直すことができるか。ポテンシャルには疑いようがないだけに、ファンの声援を力へと変換することができれば、14年の寬仁親王牌以来、3度目のG1Vも見えてくる。
全日本選抜で新たなタイトルホルダーを生み出した北日本勢が、もっとも勢いを感じる。昨年の寬仁親王牌では新田祐大が不発で4車での結束が水泡に帰したが、全日本選抜では新田が思い切った仕掛けでそのダッシュ力をフルに発揮。番手の渡邉一成を初戴冠へと導くとともに、ラインで上位独占を果たした。昨年はダービー、オールスターとビッグタイトルを制した新田は、心身ともにひと皮むけた印象だ。さらに渡邉にG1Vをもたらしたことは、新田自身にも大きなプラス要素となって返ってくることだろう。ダービー連覇のかかる新田、またグランドスラムへ王手をかけて久しい山崎芳仁。この2人を盛り上げるべく、渡邉、佐藤慎太郎らタレントは豊富にそろっている。「一成と新田が順番に獲ればいい」と、佐藤も言うように北日本でのタイトル連続奪取も十分。
平原康多、武田豊樹、神山雄一郎のSS班トリオを擁する関東勢は、底知れない力で巻き返しを狙っている。全日本選抜の初日特選では、1着入線も内側追い抜きで失格の憂き目をみた平原。動きの良さも際立っていただけに途中欠場を強いられたのは悔やまれる。続く奈良記念では初日特選を快勝も2日目に落車のアクシデント。準決も本来の躍動感に欠け、4着で最終日を待たずして欠場した。落車の影響が心配されるが、この2週間で立て直し、微差で敗れた昨年のダービーの雪辱を果たそう。平原次第では自在選手として新たなステージを迎える武田にもチャンスは巡ってくる。また、神山が直前の静岡記念で自らの記念優勝最年長記録を更新するVを果たし、衰えぬ闘志と健在ぶりを示したのも、ラインを鼓舞する好材料となろう。
SS班の村上義弘を中心とした近畿勢も軽視はできない。稲垣裕之、脇本雄太の不出場は大きな戦力ダウンだが、村上義に村上博幸、稲川翔とタイトルホルダーがそろい他地区に決して劣ることはない。絆の固い“ラインの競輪”で近畿から優勝者を輩出したい。
全日本選抜でG1初優出を遂げた近藤隆司や郡司浩平の南関勢。また、原田研太朗、小倉竜二、岩津裕介の中四国らも虎視眈々と出番をうかがっている。