数々の思いを胸に小林優Ⅴ
やはり女王の実力は絶大だった。
スタート直後に左肩を脱臼。常人なら自転車に乗れる状況ではない。しかし、前回名古屋ステージでは落車失格に終わり、「本当にふがいない結果で、お客様にも迷惑をかけてしまいました。今回は気持ちが違いましたね」と突然のアクシデントにも動じなかった。そして、最終2角から力の限り踏み上げて優勝。雪辱を果たし、4度目のコレクション制覇を成し遂げた。
「当初の考えは先行勝負に持ち込もうと思っていたんですけど、動きの中で2コーナーからのまくりになりました。浮く展開になりそうでしたけど、そこは気持ちでいけましたね。焦りはなかったです」
彼女を奮い立たせたのは、名古屋の失敗だけではなかった。高校は熊本市立必由館。熊本の仲間や被災した人達への思いを胸に戦った。
「(熊本には)同級生や、先輩、後輩がたくさんいます。(地震後に)『助けて』ってメールがきて、少ないですが水とかを持っていきました。(今回は)中途半端にはできないし、ここを走るからには優勝しかないと思っていました」
今後は本業だけでなく、再開した競技の活躍も誓う。
「今後はナショナルと普段の練習をやっていきたいです。競技もやると決めた以上はこういう舞台で先行もしないといけないと思っています。(本業でも)もっと強く。後続を引き離していけるように」
小林莉は女王の仕掛けに続いての2着。小林優を苦しめることはできなかったが、手応えをつかんで大一番を終えた。
「スタートを出てから、4番手くらいが良いと思って。優香が浮いていたので(入れて、思ったような展開になった)。付いていって、内側が3車併走になって怯んでしまいました。優香には負けたけど、感触は戻っています」
3着の山原は連覇を逃した想いと、直前の状態を加味しての結果に複雑な表情。
「踏み遅れてしまったし、バックで仕掛けられなくて悔しいです。でも、直前が悪すぎて。練習もできなかったし、その中で車券に貢献できたのは良かったです」
児玉を出させずスタイルを貫いた奥井だが結果に悔しがることしきり。先行押し切りへの道のりは険しい。
「悔しいです。いつも自分がやっていることを出せたのかなって思いはありますけど、結局それで終わりなんで。先行日本一としてもっと強くならないと」