単騎で初のタイトルを獲得
6月高松宮記念杯、10月の寬仁親王牌に次いで、今年3度目のG1ファイナル。吉田拓矢が獲るべくして念願のタイトルを手繰り寄せた。
「まだ夢みたいな感じで、信じられない気持ちです。本当にこれが感無量っていうのかな」
こう振り返った吉田だが、V確信のゴールだった。同期の新山響平をとらえると、何度も右の拳を突き上げてファンの声援に応えた。
「(単騎だったので)古性(優作)さんのラインから組み立てようと思ってた。道中、郡司(浩平)さんだったり、松浦(悠士)さんに入られたけど、そこを落ち着いて備えられたのが勝因かなと思います」
赤板2コーナーで古性が先頭に立つと、3番手を確保した郡司を入れて、打鐘の3コーナー過ぎに松浦にも切り込まれる。吉田はどんどん後方に追いやられる。が、結果的にはそれが初タイトルを呼び込んだ。
「ゴチャゴチャやるよりも一発狙った方がいいかなと。松浦さんが仕掛けたんで、その勢いをもらいました。あそこのおかげでいけました。(最終)4コーナーの下りで伸びる感じがあって、なんとか届いて良かったです」
打鐘の4コーナーで新山が、古性を叩いて先行策。渡邉一成もなんとか続き、古性は3番手。山田久徳をすくった郡司が古性後位を奪取するが、そこを松浦がまくる。郡司、古性、松浦。輪界を代表する3人の壮絶なバトルを冷静に見極めた吉田は、最終2センターから外に持ち出して外を踏み上げる。松浦らを越えた吉田だったが、その先にはまだ北日本の2人がいた。ともに107期をけん引してきた新山のスピードも衰えることはなかったが、ゴール前でその新山を並ぶ間もなく交わした。
「(G1の決勝で新山と)2人でワンツーをしているのが信じられない。(記念初優勝の昨年12月の)佐世保記念でも新山さんとワンツーでまさかG1も。あの時も新山さんが先行してたんで、また申し訳ないですね(笑)」
仲間ととも高め合いつかんだ初タイトル。昌司(111期)、有希(119期)、2人の弟の存在も、吉田にとっては刺激になっている。同じ日の豊橋では有希が逃げ切りで優勝。S級で2場所連続の完全Vを飾った。
「(有希の優勝を)僕は昼寝してて見られなくて(笑)。起きたら栃木の先輩たちから、すごいレースだったって聞いて、自分も負けられないと思いました。有希だったり茨城の後輩たちと(練習を)やらせてもらってるんですけど、毎回練習のたびにグランプリに乗って下さいって言われていた。すごいハッパをかけられてて、自分のなかでは厳しいかなって思ってたんですけど。こうして獲れたんでいい報告ができそうです」
シリーズ5日目が終わった段階では、獲得賞金ランク11位。グランプリの権利を持っている郡司、松浦、古性の優勝なら、4着以上でも初のグランプリ出場がかなった。しかしながら、終わってみれば、タイトルホルダーとして、宿口陽一、平原康多に次ぐ関東3人目のグランプリレーサーになった。高松宮記念杯では宿口、寬仁親王牌は平原が、吉田とのファイナルでG1を奪取していた。それだけにグランプリでもの思いはあっただろう。
「またこうして3人で走れるというのが信じられないです。前を走れるように志願して、関東で優勝者を出せるように頑張るだけです」
関東勢が待ちに待った20代のタイトルホルダー。獲得賞金ランクも5位にジャンプアップして、グランプリVなら賞金王が狙えるところにもいる。年末の大一番、吉田の夢が広がっていく。
打鐘の4コーナーで主導権を握った新山響平は、渡邉一成を連れてグングン加速する。古性、郡司に松浦も加わったもつれてをしり目に、逃げ切りでのG1制覇も目前だったが、吉田にさらわれた。
「(出る時に古性に)飛び付かれたら自分もチャンスがなくなるので、イエローラインのギリギリを攻めました。座った時に変なところに座ってしまって、直している余裕はなかったんですけど意外と踏めました。(最終)4コーナーの下りまでいけたんですけど、(吉田)拓矢にいかれてしまった…。拓矢に獲られたのが悔しいですね。なんかもう追いつけないんじゃないかって。でも、また追いつけるように頑張ります」
ホームバンクの2人は、最終バックではまだ後方。まくった北津留翼に乗った園田匠がスムーズに外めのコースを踏んだが3着まで。
「こんなに悔しいレースはいままでにない。(北津留)翼と一緒に乗れたチャンスを生かせなかった。バック9番手であのコースしかないってところを踏みました。けど、あと2車届かなかった。あそこまでがいまの力です」