鋭脚発揮で2度目の地元記念V
「連日、前を走る後輩と後ろを固めてくれた先輩のおかげです」
シリーズを通して、吉澤純平に3車ラインの番手が用意された。拓矢、有希の吉田兄弟がラインの先頭を務めて、準決では師匠の武田豊樹が吉澤後位を固めた。それだけに5年前の地元記念とは違う思いがこみ上げてくる。
「あれから5年くらいたって、また今度は(吉田拓矢と)一緒に走れてうれしかった」
17年の地元記念決勝は、吉澤、武田と吉田、芦澤大輔の2つに分かれて、吉澤がまくりで武田とのワンツーを成就させた。今度は杉森輝大も加わり3車のライン。S級S班の吉田が頼もしかった。
「(吉田に)全部、任せてました。(別線が)モガき合ったら、そこをまくるっていう感じだった。(最終2)センターくらいでちょっと(吉田が)止まっている感じがあって、一瞬迷ったけど内は無理だなと。それで外を踏んだ」
元砂勇雪も抵抗するが、主導権争いは早めにケリがつき石原颯に軍配が上がる。単騎の宿口陽一がまくるが、吉田はそれをアテにすることなく踏み込んで前団に襲い掛かる。松浦悠士が番手から合わせて出て吉田のスピードが鈍ると、吉澤は外に進路を取って追い込んだ。
「(ゴール線での争いは)自分が一番外だったんで、内(松浦、三谷竜生)が残ってるかもしれないって。確定が出るまでは(優勝は)半信半疑だった」
番手まくりの松浦をとらえて優勝。2月の当所、全日本選抜では二次予選敗退だけに期するものもあった。
「全日本選抜は失敗したところもあったんで、今日はそれを(返したかった)」
昨年4月には練習中のアクシデントで、左のアキレス腱断裂の大怪我を負った。2月の全日本選抜ではまだ完ぺきといえる状態ではなかったが、前々回の大垣Vから足首のサポーターを外してレースに臨めるまでになった。
「(G1に一度も出られなかった)去年は高松宮記念杯も家で見ていて、歯がゆい気持ちだった。今年は出られるんで、その分も。G1で勝つための練習をしている。若手がいっぱいいるんで、練習環境がいいですね」
5度のビッグ決勝進出にG1の表彰台も経験している吉澤が、層の厚い後輩たちを師匠のように束ねて、タイトル争いで存在感を示したい。
打鐘の4コーナーで主導権を奪った石原が駆ける。真後ろに切り替えた三谷竜生の影を抜かりなく確認して盤石の態勢。吉田のまくりを止めて、返す刀で三谷を阻んだ松浦悠士だったが、わずかに吉澤に屈した。
「(石原は)自信をもって仕掛けてくれたし、強かった。ただ、もうちょっともつだろうって、(番手から)出ていくことはあんまり考えてなかった。でも、このクラスになると…。宿口さんと吉田君(のまくり)が見えて、横じゃ(振っても)間に合わないと思って、前に踏ませてもらった。でも、今回みたいな展開で獲れないのはショック。石原君に申し訳ない。獲るところはしっかりと覚悟を決めて獲らないとって、あらためて思いました」
元砂が叩かれると三谷竜生は、最終ホーム手前で松浦後位に切り替える。最終4コーナーで吉田のまくりを張った松浦が空けたインを突くも3着まで。
「石原君のスピードが違っていて、松浦君のことをもっていければ良かったけど。直線だったんで難しかった。すんなりと切り替えることができたけど、詰まってバックを踏んで行くタイミングが取れなかった。(最終)ホームで外に持ち出せていればっていうのがあります。最後もバックを踏みながら入ってしまって、なかなか伸びなかった」