落車を乗り越えて地元G1連覇
「精神的には崖っぷちからのスタートだった」
連覇がかかる地元の大舞台。抜かりのない仕上げで臨んだ古性優作をアクシデントが襲った。初日の一次予選の1走目、最終ホーム過ぎに中本匠栄(失格)と接触して、バンクに叩きつけられた。落車からの再乗で8着。6日制になり一次予選は、2走の合計ポイントでの勝ち上がりに今年から変更された。まだ、チャンスは残っていたが、背水の陣だった。
「初日にお客さんに迷惑を掛けてしまって、本当に申し訳なかった。気持ち的には苦しかったですけど、岸和田のお客さんの声でなんとか精神状態を保って走れたのかなと」
満身創いではあっただろうが、それをおくびにも出さずに3連勝。ファンの期待に応えて、ファイナルに進んだ。
「去年(の高松宮記念杯の決勝)は、(近畿)1人で走ってすごくさみかった。今年は脇本(雄太)さん、稲川(翔)さんと3人で、安心感がありましたし、本当にリラックスして走れたかなと思います」
ファン、そして近畿の仲間の支えがあってたどり着いた決勝。例によって前受けを強いられた脇本だったが、赤板ではまさかの流れ。新山響平の上昇が遅かったのもあり、脇本は突っ張り先行を断行した。
「作戦はいつも通りなかった。脇本さんの後輪に集中して、自分のできることをって思ってました。新山君も押さえに来るのがかなり遅かったですし、脇本さんのスイッチ入るかなと。でも、突っ張ったんでビックリしました」
脇本がレースを支配。4番手は松浦悠士が脚力を温存してキープしたものの、脇本がつくり出すペースに反撃はそう容易でなかった。それでも最終2コーナーを過ぎて松浦がまくって来る。古性は一発で松浦のスピードを削ぐと、あとは視界の開けた直線を踏むだけだった。
「松浦君、松井(宏佑)君のまくりがどこで来るかという感じだった。松浦君も結構いいスピードで来たので、しっかり止めにいった。稲川さんにもチャンスがある走りもしたかったので、ああいう形にはなりました」
後ろでは稲川と松浦がからんで、佐藤慎太郎がインを強襲。それでも古性を脅かすものは誰もいなかった。2着に1車身半の差をつけて先頭でのゴールは、区切りの通算300勝でもあった。ウイニングランの古性に、稲川が背中を叩いてねぎらった。
「こうやってラインのおかげで優勝することができて、本当に脇本さんと稲川さんのおかげだと。地元の初日で落車したのは精神的にもキツい部分もありました。お客さんの声でグッときましたね」
ヒーローインタビューでは、ファンの声援に熱いものがこみあげてきた。全日本選抜に次いで今年2度目のG1制覇も、古性はさらに気を引き締める。
「目の前のレースを妥協することなく、村上(義弘)さんがつくってきてくれた競輪もあります。それを守るためにも攻めていかないといけない。G1を獲っても慢心することなく、とにかくラインで決めることを、(近畿勢が)一人でも多くグランプリに乗ることを意識して頑張っていきたい」
平たんではなかった6日間のシリーズ。常に自分を追い込んできたタフな古性だからこその優勝であり、近畿の誰もが連覇を称えた。
佐藤慎太郎は、最終バックを7番手と前が遠い。目標の新山が浮くと3コーナー過ぎから内よりを進出。直線で稲川が松浦を外に張った隙を見逃さず、瞬時の判断で稲川のインを強襲した。
「(新山は)タイミング的にワンテンポずつ遅かったかもしれない。脇本が誘導との車間を(そこまで)空けてなかったので、突っ張られるんじゃないかと思いました。そのあとはギリギリ松井を入れずにすんだのが、2着までいけたのかなと。自分ではしっかりと見極めていけたし、あのなかでの2着っていうのは収穫があった」
「こんなに申し訳ない3着はないですね…」とは、稲川翔。古性との地元ワンツーかに思われたが、直線で松浦とからんだところを佐藤に伸びられた。
「前の2人(脇本、古性)は最高のレースをしてくれた。自分も役割をまっとうして優勝を狙おうと。甘いですね。内には誰も入れないつもりだったけど、自分のコースを確保しようと松浦に当たったら、(佐藤)慎太郎さんに…。(古性)優作は苦しかったと思うけど、優作が優勝してくれてうれしかった」