鮮やかすぎるカマシでG1女王に
ガールケイリンとして初めて新設されたG1。11月のトライアルか、年間を通して獲得賞金を積み重ねるしかグランプリへの道がなかったガールズケイリンにとっては、この優勝で6月にグランプリチケットを手に入れることができる新システム。誰も欲しい優勝。それだけに役者の違う、児玉碧衣の度胸満点の仕掛けがキラリと光った。
「(坂口)楓華が動いて、(久米)詩の横でちょっと止まって見合う形になった。それでペースがガクンと落ちたんで、ここしかないと。思い切り踏みました。後ろに(小林)莉子さんがいて、1周行ったら抜かれるかなとか思ってたんですけど。抜かれたらそこでまた練習すればいいっていう気持ちだった。仕掛けるところで手を抜かずに全力で行こうと思ったのが、今日の結果につながったのかなと」
スタートのポジション取りから小林は、児玉後位に絞る。それでも児玉は、6番手から打鐘4コーナーでスパート。潔いほどの思い切りの良さが、持ち前のスピードを生んだ。最終ホームで先頭に立つと、そのままグングンと加速。児玉に続いた小林と飛び付いた坂口が接触して落車。坂口もバランスを崩して、児玉の後ろは大きく車間が空いた。
「落車の音が聞こえたので、誰かコケたなとは思ったんですけど。誰がかは全然わからなかった。モニターを通して後ろと車間が空いてるのが見えた。でも、そこで油断したら抜かれるだろうなって思ったので、目いっぱいゴールまで踏みました」
後続との差は詰まることなく、2着の久米に4車身の差をつけてゴール。完全復調をファンにアピールした。昨年末、4度目のグランプリ制覇で女王返咲きを目論んだが、落車に見舞われて鎖骨を粉砕骨折の大怪我を負った。およそ1カ月後には復帰を果たしたが、本来の児玉にはほど遠い走りだった。
「今年スタートからあまりいい成績を残せなくて、トップに戻れるかなとか、トップで戦えるかなっていう不安はずっとあった。けど、(鎖骨に入っていた)ワイヤーを抜いてからは、いつも通り走ることができた。それでこうやって初のG1を完全優勝することができたのは、今後の自分の成長というかそういうのにつながっていくんじゃないかと」
3連勝の完全Vでガールズケイリンの新たな歴史に名を刻んだ。すでのグランプリをチケットを手にしても、児玉にとってのモチベーションは違うところにある。
「現状に満足せずに上へ上へ目指せるように、レべルアップしていきたいなと思います。自分はお金が大好きなので、これからのG1も優勝すればたくさんのお金をもらえる。そこを目標にこれからのG1も獲っていきたいなと」
10月のオールガールズクラシック、11月の競輪祭女子王座と新たなタイトルも、児玉がどん欲に狙いをつける。
最終1コーナーでは目の前でアクシデントが起こった久米詩。避けて視界が開けた時には、すでに児玉がスピードに乗っていて届かいない位置にいた。
「(児玉)碧衣さんが上からカマして来るのも、ふまえながらだった。ただ、もうちょっと早く動いていたら、落車に巻き込まれていたかもしれない。自分の判断が迷ったところもあった。自分の準備不足って感じです。もうちょっと車間が詰まっていればっていうのがあったけど、吸い込まれる感じがなかった」
小林との接触で大きくバランスを崩した坂口楓華は、最終2コーナーで久米の後ろに入り態勢を整える。直線勝負には持ち込んだものの、久米を交わせず悔しそうに振り返る。
「(久米)詩ちゃんを押さえて、自分の行けるところでと。みんなのタイミングをズラしたかった。そのあとは接触があったけど、あきらめずに踏んだ。(最終)バックで余裕もあった。詩ちゃんの外にいける脚があったのに、守りに入ってしまった。まだゴール前でも脚があったのに…」