地元で魅せた五輪戦士の力
地元の佐藤水菜が、次元の違うパフォーマンスで完全V。パリ五輪を終え13日にフランスから帰国して、その日のナイターから3連勝。強行ローテーション、時差ボケ、昨年末のグランプリ以来のガールズケイリン…。ファンの声援を力に変えた佐藤にとっては、すべてが杞憂に過ぎなかった。
「パリオリンピックまでほとんどレースをせずに、ひたすらに練習に集中できたおかげで、今回のオールスターもすごくいい結果が出せた。(ナショナルチームの活動で)みなさんに姿を見せられなかった間、自分がどれだけ進化できるかが課題だった。けど、すごくいい形で(ガールズケイリンに)帰ってこられたんじゃないかと思います」
五輪ではケイリン、スプリントに出場。ガールズケイリンへの切り替えは簡単ではなかったが、3日間、誰にも先頭のゴールを譲ることはなかった。
決勝では、7番手から仕掛けた坂口楓華を目標に、打鐘2センターから外に持ち出して踏み込んだ。同じ五輪組の太田りゆ、坂口とのダッシュ勝負を早々にケリをつけて、先頭に立って風を切った。
「坂口選手が打鐘過ぎてから1回動いてきた。1周半から1周の間で行けるタイミングで自分から仕掛けようと思っていた。そのタイミングで坂口選手が動いたので、そこをうまく利用して脚を使わずに前に出ること、最後まで一番で駆け抜けることを考えていた。ゴール前は結構、タレてしまったんですけど、前半のリードがあったおかげで最後は逃げ切れました。基本的には自分が1着でゴールするために駆けているので、ゴール前は(誰にも)譲らない気持ちでした」
他の6人を置き去りにする圧巻の逃走劇でファンを魅了した。直線では太田を1車身半、突き放してのゴール。誰の目にも力の違いは明らかだった。
「もう(最終)1コーナーからすごい声援があったので、1コーナーからバックにかけて全開で踏んで、調子がいいなって思いながらでした。バックではすごく声援が聞こえて、さらに加速していけた。ゴール前でもちょっとキツいなって思ったところで声援があったので、踏ん張り切ることができました」
メダルに届かなかった五輪だったが、ガールズケイリンでは最強をアピール。これから先の競技の継続などは未定だが、「とりあえずオフを挟んで今後をどうするか考えていきたいです」。五輪戦士が見せた最高のパフォーマンス。いま、佐藤にとって、なによりも必要なのは休養だろう。
結果的には五輪戦士の直線勝負。2着の太田りゆは、佐藤との間合いをこう振り返る。
「7番車っていうのもあって、スタートは難しかった。優勝を目指すなら前はいらないし後ろも厳しい。中団に自在選手がいたので、そこに入れてもらえればと。ジャンが鳴って見合っていたし、自分も1周半から行ける準備はしていたけど、動きがなかったので待った。そこからは流れに任せてでした。佐藤さんの後ろに入れたけど、追い込みに行くタイミングが良くなかった。終わったあとに、私が追い込みにいったタイミングは250バンクのタイミングだって男子選手に言われました。400バンクなら、もう少し遅くて良かったんだと思います」
周回中に佐藤の後ろに入った日野未来だったが、最終1センターで前団を乗り越えられず佐藤が離れていく。太田を行かせて3番手に降りて、そのまま3着流れ込んだ。
「(佐藤の仕掛けに)付け切りたかったんですけど、ちぎれてしまいました。すごいトルクと、すごいスピードでした。(最終)ホームで口が空いてしまって、内からも踏んできていた。でも、最後まであきらめずに、太田さんの後ろにスイッチできればと。3着に残れて良かったです。(佐藤)水菜ちゃんの仕掛けに付いていける脚力をつけたいです。それを目標にして頑張りたい」