イチかバチか最内のVロード
121期の卒業記念チャンプが持ち前の器用さを発揮。同期だけで行われた今年のヤンググランプリを9人のなかの最年少の纐纈洸翔が制した。
「うれしいの一言です」
纐纈が破顔一笑。早期卒業制度で卒業記念に参加することなく養成所を巣立った中野慎詞、太田海也の2人をくだしてのものだけに、喜びもひとしおだろう。
「ジャン前から結構ハイピッチだった。モニターを見た時に(太田)海也さんがちょっと流し気味だったんで、真鍋(智寛)さんのところをドカせたらいけるかなと思った。けど、ドカせずって感じでしたね。それで後ろになっちゃいました」
同地区で前を託した村田祐樹が、赤板1コーナーで前に出る。しかしながら、九州勢、さらに太田の波状攻撃で気がつけば最終ホームで6、7番手になっていた。それでも村田は、再アタック。前団をのみ込む勢いだったが、逃げる太田に中野が迫ったバック過ぎに失速。そこから纐纈が冷静だった。外に浮かされながらも、2センターで空いたスペースを見つけて内に進路を変更した。
「1センターぐらいで結構、村田さんがいいスピードだったんで、そのまま行っちゃうかなと。ただ、バックくらいであおりをもらっていた。自分は内が空いてるのが見えたので、海也さんの後ろまで行けるかなと思って内に切り込んだ感じですね」
東矢圭吾が外に持ち出して、直線の入口で纐纈の目の前には、サイドバイサイドを演じている五輪戦士2人。纐纈が選んだVロードは太田、中野の中割りではなく、伸るか反るかの最内のコースだった。
「内に突っ込んだ時は、正直、空いてくれと思いながらいった。イチかバチかでいきました。(ゴール前は中野)慎詞さんよりは前にいられたと。みんなからもおめでとうって言われたので、優勝したなって感じがしました」
村田の仕掛け、そして中野、太田の意地の激突があったからこその優勝。それは纐纈もわかっている。
「自力を出してしっかりG1で力勝負していけるようになりたい。いま、愛知県と言ったら藤井侑吾さんだと思う。愛知県と言ったら藤井侑吾さんと纐纈洸翔と言われるくらいの自力選手になっていければなと思います。(今年は)夏が終わったぐらいから調子落としてたんですけど、こうやって優勝して締めくくれたんで来年につなげていきたいです」
今年は8月にオールスターで初めてのG1を経験したが、未勝利に終わった。ニュースターが渇望される中部勢だけに、22歳の纐纈に求められる期待は小さくない。その思いを胸に纐纈は飛躍を誓う。
太田の真後ろからまくった中野慎詞は、最終バックで太田にブロックされてスピードが鈍る。それでも直線半ばで太田をとらえたが、インを強襲した纐纈に優勝をさらわれた。
「冷静にレース運びができたけど、最後に差されて悔しい。(太田とのモガき合いに勝てる)思いました。僕の方が持久力なら高いと思って、併走になったらと冷静にいけた。海也も負けじとブロックしてきて、結果、内が空いていかれた。負けて悔しい気持ちでいっぱいです」
叩かれた後藤大輝が内に詰まり、最終2コーナー過ぎから切り替えた東矢圭吾は、直線で太田、中野の外を追い込んだ。
「(最終)1コーナーで外が見えて、このままだと(勝負権が)なくなってしまうし、切り替えさせてもらった。慎詞のところで大川(剛)に競り勝ったりしたけど、最後に纐纈君が行ったコースが正解でしたね。(中野、太田の)2人でやり合っていて、内が空かないと思って、脚に余裕があって外を踏んだ。けど、結果、内が正解でした」