絶好機をモノにして2度目のグランプリV
訪れたチャンスは逃さない。真後ろから清水裕友の影もチラついたが、古性優作が付け入る隙を与えることなく抜け出した。
「脇本(雄太)さんのおかげで優勝できてうれしいです」
今年1年をS級S班としてともに支え合い、このグランプリで抜けたパフォーマンスを見せた脇本に開口一番、感謝した。
「理想通りの初手の位置を取ってでした。あの並び、あの叩き方になったら脇本さんが勝負するって。思っていた通りでした」
1番車の古性がスタートで関東勢を受けるようにして、脇本、古性で3、4番手を確保して周回を重ねる。南関勢の先頭を務めた北井佑季がペースを上げずにいて、脇本も構えるつもりは毛頭ない。赤板2コーナーから襲い掛かった脇本が主導権を奪い、抜群の掛かりで駆ける。
「(脇本は)もう掛かりが抜群というか、自分も(最終)ホームから1コーナーにかけて勝手に口が空いていくぐらい加速していった。これは誰も来られないだろうなって思っていました。(脇本は2日目の)昨日の夜の、最後の指定練習のタイムがこの時期に出るようなタイムではなかった。脇本さんがいままでいろいろトレーニングしてきて、ナショナルチームでのトレーニングだとか、そういうピーキングとかが抜群にうまいのかなって。僕も脅威に感じるくらいのタイムでしたね」
前日の指定練習で脇本の仕上がりを肌で感じていた古性だったが、自身のデキにも手ごたえはあった。
「僕も昨日の指定練習で仕上がった感じで、脚が軽いなって。久々に仕上がったなっていう感じだった。脇本さんもすごかったんですけど、脚的には今年一番いいなっていうがあった」
清水を警戒しながらの運行ではあったが、もう最終バックでは別線に出番はない。あとは脇本とのラインの2人の勝負だった。
「初めてタイトルを獲った時だったら、今回も差せてなかったと思います。自分の脚力も少しずつ上がっているのかなと」
直線半ばで脇本を抜き去り、外から迫った清水を4分の3車身振り切ってのゴール。21年に単騎で制した静岡でのグランプリに次いで、2度目のグランプリVも静岡が舞台だった。
「(静岡は)やっぱり相性いいとずっと思っていた。走っていても気持ちがいいですし、走っていても勝てそうだなって思わせてくれるバンクですね」
2度目のグランプリを獲り、G1と合わせると10個のタイトル。目標として掲げているダブルグランドスラムはもとより、ダブルグランプリスラム(全冠制覇とグランプリ)まで視界に入る。
「あと日本選手権と競輪祭を2個ずつ獲ったら、全部2個ずつなので、あと4回。燃え尽きない限り頑張りたい」
一昨年の脇本の年間獲得賞金額の記録を更新して、今年の賞金王。まだまだ夢は広がっていく。
単騎の清水裕友は近畿勢後位にポジションを取り、赤板2コーナーで仕掛けた脇本、古性を追走。最終ホーム手前で単独の3番手を手に入れたものの仕掛けられず、古性に流れ込んでの2着になった。
「(周回中は)近畿の後ろというよりも、中団を取ったラインの後ろからでした。関東勢が前を取った時点で(眞杉匠が南関分断の)粘りもあると思った。前も見えていましたし、脇本さんは行くだろうっと思っていたので準備はできていました。(最終)バックで一瞬、詰まったんですけど、3コーナーからゴールにかけて伸びていった。脇本さんがまだ掛かっているのに古性さんの伸びがすごかった」
眞杉が内に包まれ、主導権の北井がペースを上げる前の赤板2コーナーで脇本雄太はスパート。北井をあっさり叩いたところで大方、別線との勝負づけは済んでいた。番手の古性が優勝して、自身は3着に踏ん張った。
「(周回中は)僕のなかでは中団が理想で、位置取りうまい古性君がやってくれた。眞杉君が踏んでいるのが見えて、どこかで仕掛けようと。ガムシャラに踏んでいって、後ろがどうなっているかはわからなかった。けど、古性君を信頼していた。ラインで決めるという意識があって、残れれば良かったけど。グランプリだけあって、もう少し残れたら。今年は古性君との連係がうまくいかない時もあったので、その分、しっかりこの舞台で決められた。納得のできるレースができた」