好展開を生んだ感謝のGP
10年連続で出場を続けていたグランプリが昨年に途切れて、2年ぶりに迎えた大舞台。今回のグランプリが自身にとって競輪人生の第2章と位置づけていた石井寛子が、華々しい幕を開けた。
「2017年に優勝した時よりも、何倍も、何倍もうれしかった。その理由が応援してくれる人が増えてきたパワーなんだなと思いました」
感謝を胸に発走機に立った石井寛は、大外の7番車から出ると坂口楓華を前に見る形で7番手から進めた。
「7番車だったので後方を選んだ。私は前々勝負が多かったので、グランプリでも前々で戦ってきて勝てない日々が続いていた。それで今回、2024年は後ろから我慢のレースだったかなと」
結果、その我慢が石井寛に大きな勝利をもたらすことになった。打鐘を過ぎても隊列に変化はなく、4コーナーから坂口がカマす。最終ホーム過ぎに佐藤水菜を叩いた坂口に続いた石井寛が、絶好の2番手を確保。佐藤は3番手で立て直すのに時間を擁し、石井寛にとっては願ってもないチャンスだった。
「最終バックで2番手の状態。この状態は、なんだろうっていう錯覚に陥ってしまった。(展開的には)一番いい状態じゃないですか。冷静になっていつも通り焦らず走れれば、このまま突き抜けられるかなっていうイメージがバックの時は思いました」
Vモードに頭を切り替えた石井寛は、児玉碧衣に合わせてバックからまくる佐藤との間合いを取りながら追い込んだ。
「(ゴールして)ちょっとまだなにか夢心地だった。グランプリの場を楽しむというか、ワクワクドキドキを。緊張するのはもったいないと思っていたので、ドキドキを走りながらもって。集中もできていたし、ゴールしてからも、そうですね、ちょっと夢のような感じだった。勝ったっていうよりは、みんなの気持ちに、その応援してくれてる方の気持ちに応えられたなって」
外から迫る世界のケイリン女王、佐藤を退けての優勝。17年の平塚以来、2度目のグランプリ制覇を遂げた。
「去年、(グランプリに)出られなかった1年から、とても応援してもらっていた。それをこういう形で返せて、ファンの方たちがすごい喜んでくれてると思うのでうれしいです。(ファンの応援もあってグランプリを)状態的に、心も体もとてもいい状態で迎えられた。7月まで本当に(グランプリ出場)圏外だった。グランプリを走れないっていう不安もあったんですけど、奮い立たせた。いろんな人と出会って、パワーをもらえたなと」
多くサポートがあったからこその優勝。年間の獲得賞金も3000万円を楽に超えて、賞金女王の座も手に入れた。
「(優勝賞金は)いつも通り寄付をして、関わってくれた人に恩返しをしてから、推し活に使いたいと思います。応援しているアーティストに(笑)」
最後まで感謝の言葉であふれた石井寛の“第2章”は、まだプロローグにすぎない。
誘導が退避して前受けからそのまま先頭に立った佐藤水菜は、打鐘4コーナーでカマした坂口、続いた石井寛を出させて3番手で立て直す。児玉のまくりに合わせて最終バックから踏み込んだが、いつものような伸びは見られなかった。
「作戦はなかったです。前が空いていたので入りました。(坂口のカマシに)飛び付こうと思ったけど、2年前の(グランプリでの)落車が怖くて安全にと。引くならさっさと引いてとも思った」
周回中、2番手にいた尾崎睦は、前の佐藤が仕掛けると車間が空いて遅れた。が、内よりに進路を取り3着に入った。
「やりたいことはできたと思う。初手で(尾方)真生が来ると思ったら、サトミナ(佐藤)が来て入れて、サトミナの動きに対応できるようにと。(坂口)楓華は来ると思っていて、(児玉)碧衣もいいスピードで来ていた。みんながやることをやっていて、さすがなだと思いました。ちょっとコースは難しかったです」