• 第71回日本選手権競輪5/2〜5/7

後記 GⅠ 京王閣 05/02

近畿新時代の幕開け

三谷竜生

三谷竜生

三谷竜生

三谷竜生

【本文15×22行+34行×19行】
 近畿新時代の到来だ。怪我で戦線離脱を余儀なくされた村上義を欠いた近畿勢は、ただひとりのS班、稲垣裕が二次予選で早々と脱落。2人合わせてG1を14勝の平原、武田や息の合った深谷、浅井の中部コンビとG1決勝の常連を向こうに回して、近畿ひとりになった三谷は桑原との急造ラインで3度目のG1決勝の舞台に立った。
 「ひとりでもしっかり力を出し切るレースをしようと。自分のやることに変わりはないんで」
 勝負どころは打鐘過ぎに訪れた。8番手まで下げた深谷が浅井を連れて赤板の2角から踏み込むと、先頭に立っていた山田がイエローライン付近まで上がる。三谷はぽっかりと空いたインを見逃さず、俊敏に突いて3番手を確保した。
 「浅井さんのところか3番手を取り切ってからと思ってました」
 展開に応じて強気の攻めができるのも三谷の大きな魅力。桑原が続いて5番手以降がもつれると、前団を射程圏に入れ浅井との勝負に照準を合わせた。
 「内が空いてたんで体が勝手に反応して、いいところで行けた。最後行けるかどうかわからなかったけど。ゴール勝負できるようにと思って踏んだ」
 浅井との間合いを図り、最終4角から力のあらんかぎり踏み込んだ。ゴールでは優勝を確信できるのに十分なアドバンテージ、1車身差をつけていた。
 「素直にうれしかった、(ゴールして)1着っていう確信がありました」
 父、典正氏(49期引退)、そして政史(93期)、将太(92期)の2人の兄を追いかけて輪界に飛び込んだのは自然の流れだった。競輪一家のなかで育まれた才能がダービーの大舞台で開花。輪界の歴史の新たなページを開いた。
 「100期台初ということは非常にうれしいです。(父には)あんまり褒めてもらえることがないので、唯一褒めてもらえるかなと(笑)」
 96期の深谷以降、100期台としては初めてのG1制覇を遂げた。
 「タイトル獲ったことを誇りに思って、一戦、一戦頑張っていきたい」
 14年の村上博の全日本選抜、村上義のダービー、そして高松宮記念杯の稲川翔。さらに昨年、村上義のダービーとグランプリ、稲垣裕が初タイトルを奪取した寬仁親王牌。ここ数年はすべてラインの厚みをバックボーンにして優勝を重ねてきた近畿勢から生まれた“ニューエイジ”。三谷がこれからの近畿の世界をつくりあげていく。【負け組34×19行】浅井康、止められず
 二次予選では松岡貴、単騎の準決は中部勢を選択した桑原は、初のG1決勝で三谷の番手。最後までライン選択で正解を出して2着に入った。
 「三谷君には獲れるように走ってくれと言っていた。それで獲ってくれたんで最高です。思い切り抜きにいったけど、最後は脚が三角に。これが経験かと。本当に思い出になった。今日の夜はひとりでニヤニヤしますよ(笑)」
 赤板の2角から踏み込んだ深谷がタイミング良く主導権を握って、番手の浅井に願ってもないチャンスが訪れた。11年のオールスター以来、久々のG1Vかに思われたが、2車のラインでの立ち回りは浅井をもってしても簡単ではなかった。三谷、桑原に交わされて3着がいっぱい。
 「あのタイミングで(三谷を振って)行って、止まらないってことは番手の勉強しないとダメ。自分の調子は上がってたし、深谷も仕上がってた」
 平原に乗った武田が直線で差し脚を伸ばすも、逃げた深谷を交わしての4着がやっと。近畿地区から生まれたニューヒーローの優勝をたたえる。
 「悔しいけど、(平原に任せて)僕は力勝負をしたわけじゃない。先行で決勝に上がって来れる選手(三谷)っていうのは、特別を獲れる選手ですから。僕も若いころはそれを目標にやっていた。村上(義)君が欠場したけど、こうして村上君が育てたラインが勝った。村上君の力は改めて偉大だなと」
 「いろんな判断ミスがあった。最終的にホームで休まず行けば…。(山田にブロックを)もらってしまった」とは、G1で3連覇がかなわずの平原。

Race Playback

レース展開5
勝負どころで内を突いた2三谷が3番手奪取
レース展開7
1平原は中団で4山田とやり合い苦しくなる
レース展開9
4角から渾身の踏み込みで2三谷がG1制覇

レース経過

誘導員 : 柴田洋輔

 号砲と同時に浅井が勢い良く飛び出し、深谷を迎え入れる。中部コンビが前受け、平原-武田の関東コンビが続いて単騎の守澤が5番手、これを三谷-桑原で追いかけ、山田-園田の九州コンビが後攻めの形で隊列は落ち着く。
 青板周回のバックから早くも山田が上昇。赤板前に誘導員を下ろして先頭に立つ。すんなり車を8番手まで下げた深谷は2コーナーからスパート。山田を2センターで叩いて先行策に出る。この時に中バンクに上がっていた山田の内をすくった三谷が好判断で3番手のポジションを確保する。すかさず後方から踏み上げた平原は山田と5番手で併走。山田の激しい抵抗をしのいで位置を取った平原が最終3コーナーからまくるが、車は進まない。快調に逃げる深谷に対し、3番手となった三谷が4コーナーからこん身の追い込み勝負。番手から追い込む浅井を力強く抜き去り、待望のG1初制覇を果たした。三谷マークの桑原が懸命に続いて2着。番手で絶好展開となった浅井は3着に敗れた。逃げた深谷は直線で粘りを欠いて5着。

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