初代夜の競輪王に輝く
「久々すぎてG1を獲る感覚を忘れてた」
2度目のタイトルを制覇した11年9月のオールスター以来、7年以上ぶりのG1優勝。こう振り返った浅井だったが、もちろん“飛び方を忘れた”わけではなかった。15年、昨年と2度のグランプリ(GP)王者にも輝き、今年も記念3VとG1表彰台で賞金を積み重ねて8年連続8回目のGP出場をシリーズ前に確定させていた。
「ダービーと同じ6日間の戦いプラス、今回は5走だった。体力がいるレースだったけど、普段のトレーニング量が増えているんで、その結果が出たのかなと感じてる」
ナイターで初めてのG1は、6日制のサバイバルシリーズ。特選シードがなくなりS級S班の浅井といえども一次予選からのスタートを余儀なくされた。気の抜けない戦いだったが、終わってみればオール連対。豊富な練習量に裏付けされ、高いパフォーマンスが約束される浅井にとっては、当然の結果だったのかもしれない。
決勝は脇本の番手を弟デシの柴崎に任せて、浅井は3番手。究極の判断が迫られる展開だった。
「平原さんがいいスピードで来て、自分は内を締めとかなきゃいけなかった。(柴崎)淳君が横に張りながら踏んだ感じもあったけど。そのなかで平原さんが淳君を放り込んだ感じになって、自分はヤバいなと思った」
太田の上昇に前受けの脇本が突っ張って、流れは脇本ラインに向いた。4番手からまくった平原を番手の柴崎がけん制するが、平原に押し込まれる。浅井は一瞬の判断で平原にコースを塞がれる前に、柴崎の内を突いて直線勝負。ゴール寸前の最後のひと伸びで脇本を交わしG1、3連覇を阻んだ。
「(最終)4コーナーを回って、結構キツかった。なんとかハンドルを2、3回投げた感じだった。年末(のGP)に向けてワッキー(脇本)を抜くか、もしくはまくれるように。いままで通りしっかりトレーニングに励んで、競輪に向き合っていきたい。それでお客さまの期待に応えられるように。2連覇で3回目(のGP優勝)を達成できるように、日々努力をします」
GPチャンピオンジャージを身にまとっては、初めてのG1制覇。連覇がかかるGPは脇本との別線が濃厚だが、最高の形で大一番を迎えられることは間違いない。
赤板からの突っ張り先行に出た脇本は惜しくも2着。G1、3連覇こそ逃したが、完全にレースを支配した内容に評価が下がることはない。
「突っ張ることは半分くらい考えてました。太田がなめて押さえてきたし、もう自分の距離だと思って自信をもっていきました。自分のペースに持ち込めたんで、僕のなかでは納得はしています。今後の課題も見つかったので、グランプリに向けてしっかりやっていきます」
最終3角から外をまくり追い込んだ清水が3着に届いた。賞金ランクで原田研を逆転。最後の枠に滑り込んで、初のグランプリには夢見心地だ。
「(GP出場が決まって)本当ですか。ちょっと言葉が出ないです。太田が早めに切るかなと思ったけど、行かなくてヤバいなと思いました。アタマまでは厳しいかなと思ったけど、あきらめずに踏もうと。良く伸びてくれましたね。ただ、準決の方がキツかった。決勝の方が伸びた感じがありました」
脇本の番手を回った柴崎にとっては、願ってもない流れ。しかしながら、初めてのG1ファイナルは4着に終わった。
「決勝の舞台は面白いですね。経験不足が出たんですかね…。(最終)2コーナー過ぎは夢をみましたよ。自分では余裕もあったし、このままならゴボウ抜きかなって。浅井さんに内からこられて正直、腰砕けになってしまった。でも、あきらめずに踏みました。それでも3着までには入らないとダメですよね」