夢のグランプリ制覇
小林優香が奇襲のカマシ先行に出て、2番手の石井寛子は車間が空きながら追いかける。3番手の高木真備は最終2コーナーで後続の仕掛けを待つことなく踏み込んだ。
「後ろからの仕掛けがないと思ったので、行けると思ったタイミングで思い切って仕掛けられました。(最終)3コーナー手前ぐらいでは、もう(逃げる小林優に)並べるようにと思っていきました」
抜群のスピードで思惑通り小林優に並びかけると、ピタリと続いて脚をためた小林莉子、グランプリ4連覇にこん身の力を振り絞る児玉碧衣らを退けてゴールを駆け抜けた。
「グランプリで優勝っていうことだけを考えて、ずっと1年間を走ってきた。それが達成できてうれしい気持ちと、あとはもうたくさんの人に支えてもらって応援してもらった感謝の気持ちでいっぱいです」
5回目にしてつかんだ初のグランプリ。高木はゴールしたあとの2コーナーで右の拳を高く突き上げた。
今年は獲得賞金ランク4位でのグランプリ出場も、下位との賞金差は大きくなかった。11月、小倉のグランプリトライアルの前には中ゼロ、中2日の強行スケジュールで連続の完全V。賞金を加算して、グランプリ出場につなげた。
「競輪祭(グランプリトライアル)の少し前くらいで(賞金)順位がすごい競ってたので、あのあたりが一番。1戦も落とせないというプレッシャーですごい苦しかったのはあります」
グランプリチケットを手に入れたあとは、ここまで1カ月以上空いたゆとりのローテーションで大一番に臨んだ。
「高木隆弘(神奈川・64期)さんがずっと練習を見てくれて、気持ちの面でも技術の面でもすべてを教えてくださったので感謝しかないです。もう5年以上はお世話になっています。まず今年、私の一番の目標であり夢であったグランプリを優勝できて本当にうれしい。来年もまたビッグレースでたくさん優勝して、この舞台で優勝争いできるように頑張りたい」
3度のG1優勝を誇る高木隆弘の指導を仰ぎ夢のグランプリ制覇にたどり着いた高木が22年は女王として歩みだす。
終始、高木の後ろにポジションを取った小林莉子だったが、半車身差までしか詰め寄ることができなかった。初代ガールズグランプリチャンプの2度目の制覇は、来年に持ち越された。
「(高木)真備が強かったです。位置的にも展開的にも良かったのに…。自分はゴール前勝負しか勝ち目がないと思っていましたし、絶好の展開だった。でも、真備が強かったですね。(後ろから来る児玉の)気配は感じていたんですけど、それ以上に真備が掛かっていった。(最終)2センターではもらったって思ったのに、下りの加速がヤバかったです。マジかぁって感じでした。悔しいですね」
4連覇のならずの児玉碧衣は、小林優の積極策が想定外だったようで後方からの巻き返しを強いられた。
「(小林)優香さんが駆けるのは予想外でした。初手は3番手くらいがいいかなって思ったんですけど、(尾方)真生が上がってきて、駆けるのは真生しかいないと思って入れました。真生が駆けていった上をまくればって思っていたんですけどね。もっと考えないとですね。絶対っていうことはないんだって勉強になりました。感触的には悪くなかった。4連覇はできなかったですけど、来年からまた3連覇、4連覇を目指していけるように。どの位置にいても自分の力で自分のタイミングで行ける力をつけていきたい。高木さんの優勝を称えつつ、自分もまたここに戻ってこられるように頑張ります」