グランプリ初制覇で賞金王
優勝を確信した脇本雄太が、ゴールを通過した2コーナーで右の拳を高々と上げて、1万を超える場内のファンに応えた。その脇本に寄り添う古性優作が、背中を叩いて初めてのグランプリ制覇を称えた。
「とにかく自分のなかでも、古性君の動きを信じてました。仮に自分がダメな展開になったとしても、古性君がしっかりとやってくれる。お互い信頼関係のもとでレースをしていた」
脇本が5月日本選手権、8月のオールスター。そして古性は全日本選抜と高松宮記念杯。合わせて今年4冠制覇もワンツーがなかっただけに、ラインでの独占は2人にとって最高のフィナーレになった。
レースは北日本の4車が前団を占めて、8番手からの組み立てを強いられた。しかしながら、単騎の松浦悠士が北日本分断に動く脇本にとってのプラスの誤算もあった。
「(松浦の動きは)まったく想定してなくて、これで僕にもチャンスがあるなって思いました」
3番手に下げた新田祐大の追い上げが1つのポイントでもあったが、そこを逃した脇本は腹をくくって自身のスタイルに徹した。
「一番は新田さんが、どこで松浦君のところに追い上げるかっていうところだった。隊列が伸びてしまったところで、自分も見失ってしまった。新田さんの動くタイミングがちょっと見えなかった。それでいつも通りのジャンのところからしっかりと仕掛けようと思ってました」
打鐘3コーナーからスパート。ニュースター、逃げる新山響平の掛かりも悪くなかったが、脇本のスピードがそれを上回った。
「(最終ホームの)直線のタイミングで郡司君とかぶったりしそうかなってところもありました。そのあと新田さんの番手まくりも見えたっていうのもあった。けど、そこをしっかり乗り切ることができた」
松浦から守り切った新山後位から新田が自力に転じるが、勢いの違いは明らか。ロングまくりで先頭に立ったあとは、古性との勝負だった。
「本当にハンドルを投げる瞬間まで、(優勝は)わからなかった。でも、自分のなかで、レースを走った感じでは日本選手権に近い展開と自分の走りだったのかなって思っています」
古性を4分の1輪差で退けた脇本が、グランプリ初制覇。昨年は自身2度目のオリンピックとなった東京五輪だが、ケイリン種目で7位。期待されたメダルには手が届かなかった。その悔しさを力に変えてここまできた。
「(昨年の)オリンピックが終わって、自分の満足いく結果が生まれなかった。その悔しさを日本の競輪でしっかりリベンジしたいと思ってた。このグランプリで晴らすことができた。去年グランプリに出られなかった分も、今年はしっかりとグランプリで優勝するっていう目標を達成できてすごくうれしい」
年間の獲得賞金で18年の三谷竜生の記録を大幅に塗り替え、初の年間3億円超えを成し遂げて22年の賞金王に輝いた。
「(獲得賞金の記録は)まだ実感はないんですけど、記録をつくったってことは誇りに思っていきたい。来年1年間、責任のあるユニフォームを着なければいけないというのもあるので、また引き締めて頑張りたいです」
東京五輪を経て精神的にもタフになった脇本は、グランプリチャンピオンジャージをまとう覚悟はできている。
脇本との連結を壊すことなく直線を迎えた古性優作は、ゴール前でのハンドル投げに持ち込んだが2着。グランプリ連覇はならなかった。
「(脇本は)いままでで一番強かったんじゃないですかね。もう脇本さんが出切った時点で、自分も出し切っていました。とにかく脇本さんが強かった。本当に頼もしかった。北日本ラインが長くて強かったんですけど。村上(義弘)さんが2023年、安心できるレースがしたかった。今年はお互いに2個、2個(G1を)獲って、最後も(近畿で)獲れた。近畿の年だったと思うし、来年もそうできるように」
地元の郡司浩平は、最終1センター過ぎに近畿勢にスイッチ。4コーナーでは射程圏に収めるも、近畿の2人に割って入るっことはできなかった。
「(スタートで)新山君が取りに行ったので、自分は内枠でしたしその後ろからって感じでした。道中の松浦君の動きはさすがだなって。僕だったらできなかったと思う。たぶん新山君も松浦君の動きがあったので、赤板のところは踏みたくなかったと思うんですけどハイペースになったのかなって。(脇本が)あそこで来るかっていうタイミングできた。自分も仕掛けたかったんですけど、単騎でしたしまだ早いかなっていうのもあった。その後ろをって見たんですけど、古性君も隙がない選手なので、そこに飛び付くっていう判断もちょっと。最後は苦し紛れに外を踏みましたけど、すんなりの古性君が差せていない。力の差を感じました」