世界女王がノンストップでグランプリへ
世界のケイリンチャンピオンは、ガールズケイリンでも力が違った。昨年は10月のオールガールズクラシックを制覇してグランプリの出場権を有していた佐藤水菜だったが、五輪イヤーの今年は違った。パリ五輪、世界選手権と競技での多忙なスケジュールもあり、今年はここまでG1には出られなかった。それだけに年末のグランプリには、ここでタイトルを獲るしかなかった。
「最終日は自力とまではいかないけど、長い距離を踏んで優勝することができたんでうれしいです。(今シリーズは)満身創いのなかで、3日間、自分の力を発揮することができた。ガールズケイリンを走ってファンのみなさんの声援が力になっているなって実感できた」
レースは7番手になった久米詩から動き出して、打鐘では包まれる形になった佐藤だったが最終ホームでは視界良好の6番手。久米に合わせるように、梅川風子も仕掛ける。逃げる太田りゆに梅川が迫り、前団の隊列が凝縮されたところを佐藤がまくりで襲い掛かった。最後は押し切り図る太田の逃げをとらえて、佐藤が先頭でゴールした。
「あとは5番車(梅川)が中団だったので、そこをまくり切れたらって。うまくいけて良かったです。自分の直感としては世界選手権で一緒に(ケイリンの)決勝を戦った梅川選手は本当に強いというのは体感してる。まずは梅川選手を乗り越えられるかどうかって。自分自身の課題になっていた。そこをまくり切れたあとは、ゴールまでいくだけだと。ゴールまで外々だったんですけど、そういうのは得意だったので、自分の持ち味を生かせたのかなと思います」
10月にはデンマークで行われた世界選手権で女子ケイリン種目としては、日本勢初の金メダルを獲得。世界女王としてガールズケイリンでも負けられない今シリーズだった。が、終わってみれば万全のコンディションとは言えないなかで圧巻の3連勝だった。
「世界女王というものになれましたが、自分がまだその地位に見合ったような人間だとは思っていないのが正直なところです。この大会を通して自分の力っていうものを再認識して、やっぱり弱ってるというのがある。静岡グランプリまであと1カ月しかないので、しっかりと一から基礎をつくり直して、また少しでも前の調子を取り戻せるように、そして(グランプリを)2連覇できるように」
今年ガールズケイリンではまだ4場所しか走っていない佐藤だが、負け知らずの12連勝。昨年のグランプリから土つかずでのグランプリ連覇が年末にかかっているが、世界女王をさえぎるものはなにもない。
後方から動き出した久米に合わせて、3番手で大きく車間を空けていた梅川も最終ホーム目がけてスパート。前にいた太田りゆは、後続をギリギリまで引きつけて1コーナーから踏み上げる。太田は梅川を合わせ切って、バックを先頭で通過したが、まくった佐藤には直線で屈して2着。
「(後ろの方と)車間が空いているのが見えて、こっそりペースを上げて、合わさせられるようにと。ダッシュは得意なので、ある程度、誰でも合わせられると。うまく合わせたと思ったんですけど、タレてないと思いつつも、(佐藤に抜かれて)タレていたんだと。悔しいけど、やれることはやった」
スタート直後に佐藤の後ろに入った當銘直美は、大外をまくった佐藤の加速に食い下がり3着に入った。
「作戦通りの走りでした。(佐藤の後ろの)取り方がハウスしてしまって危なっかしくなってしまったけど、主張して取り切れた。(久米が動いて7番手になったので)後ろを気にする必要がなく、集中して追走するだけでした。ほかの人なら止まるところで、外、外、外を回っても勝てる人は強い。(佐藤)水菜が突き抜けているけど、車間が詰まらずに残念でした。2着だったら、いまの自分で合格点ですね。ひとつ前が優勝なら2着を取らないとダメ」