まくり一撃でポテンシャルを証明
中石湊
「すごい緊張感があった。こんな開催は初めてだったので、すごくいい経験になりました」
養成所からナショナルチームに在籍していた逸材。今年の10月にはチリで行われた世界選手権にも出場した経歴もある中石湊が、こう言って興奮気味にファンの声援に応えた。
123、125期の9人による激突は、先月に21歳を迎えたばかりの最年少組。関東勢は3車で結束し、広島コンビは同門の絆で連係。しかしながら、北日本からただ一人の参戦となった中石は単騎。ナショナルチームで鍛え抜かれた脚力を信じて一撃にかけた。
「前のラインがある人たちが結構、ローテーションしていた。そこはしっかり見ていってスピードもらってと思っていた。(残り)1周で緩んだら思い切り行こうかなと思ったんですけど、いいスピードで掛かっていたんで落ち着いてでした」
打鐘では西田優大が主導権を握るも、2センター過ぎから3番手にいた梶原海斗が仕掛ける。単騎の梶原が叩いて、西田が最終ホームで番手に収まる。入れ替わりがあるなかで、中石は一本棒の8番手でタイミングを待った。
「(最終)ホーム過ぎにちょっと緩んでたんで、思い切り行きました。いつもより出が良かった。落ち着いていて脚もたまっていましたし、あんまり気にせずに1着が取りたいというか、気持ちでどんな展開でも大外でも踏み切ったろうって感じだったです」
番手から西田、4番手から阿部英斗も踏み込むが、スピードに乗った中石には無関係だった。バック過ぎに射程圏に入れたのもつかの間、そのまま前団を仕留めて、直線の入り口で先頭。後続を退けて、07年の菊地圭尚(89期)以来となる北海道からのヤンググランプリのチャンプが誕生した。
「(今年を)1着で締めくくったのはすごくいいんですけど、来年のしっかり期待に応えることが一番の目標でもある。ここで落ち着かずにもっと上を目指してドンドン強くなろうと思いました」
8月のオールスターで初めてG1を経験して、いきなり2連対。まだまだどこまでも強くなる北日本期待の星は、競輪と競技の両立でさらに磨かれていく。
森田一郎は最終ホームを5番手。単騎まくりの阿部に乗って追い込んだ。
「梶原さんが上がって来て、阿部君も上がって来ていた。それで(最終)ホームを迎えたんですけど、出ていくかめちゃくちゃ迷ってしまいました。中石君を後ろに置いて、あそこから行ってももたないなって。バックでいければ良かったんですけど。3コーナーになってしまった。最低でもバックで仕掛けられていれば。悔しいというより情けないですね」
周回中から中石後位にいた栗山和樹は、中石の加速に車間が空いて追い切れなかった。
「(中石に)道中で何回も行けるタイミングでスカされたので、突っかかってしまって(最終)ホームでいっぱいでした。あそこで先に動くわけにもいかなかった。夢を見ましたけど、付いていけなかった」