史上初の逃げ切りで年間グランプリスラム
佐藤水菜
ガールズケイリン史上初となるグランプリスラムを8月の女子オールスターで、11月の競輪祭女子王座戦で年間グランドスラム。誰も成し得なかった新たな道を切り開いてきた佐藤水菜が、これまで14回行われたガールズグランプリで初めての逃げ切り制覇。年間グランドスラムに自ら花を添えた。
「レースの組み立ては、なにも考えてなかったです。(スタートを)出た位置からの組み立てだったんですけど、まさか4番手が取れるとは思わなかったんでうれしかったです」
あくまで自然体。佐藤は持てる力を発揮することに集中した。
「どんなにキツい展開でも、苦しい展開でも、自力を出してみなさんに納得するレースをしなきゃと近年はずっと思っている。それは世界選手権でもそうですし、しっかりと自力を出すようになった」
10月の世界選手権のケイリンで連覇。世界女王、そしてガールズケイリンの女王としての自覚でもあった。
「今日は自分で先行したり、自力を出して頑張りたいってアップの前に決めていた。しっかりと自力を出す時に出せて、優勝できたのでうれしいです」
打鐘4コーナー手前で児玉碧衣が先頭に立つと、その上を叩いて最終ホーム手前で主導権を奪取。ラインのないガールズケイリンにとっては、リスキーとも思える先行策に出た。
「一生懸命だったので、レースがどんなだったかとか覚えてなくて、ただただガムシャラに頑張った記憶しかないです」
こう振り返った佐藤だが、ラスト1周のペースで自分を見失うことはなかった。4番手からまくりで迫る尾崎睦を最終2コーナーからの加速で合わせて、2番手に入っていた児玉碧衣と併走。直線でも余裕たっぷりに後続を振り切った。
「今年の最後を締めくくるレースは、納得いくような走りをしようって決めていた。精いっぱい頑張ったレースでした」
完ぺきな内容での年間グランプリスラム。国内外で敵なしでも、さらに高いモチベーションで来年を見据える。
「私自身、昨日より強い自分をって思って、毎日目標を立ててやっています。ただ、今年は自分の予想をはるかに上回るすごい成績を収めてしまって、このプレッシャーにどう耐えようか悩む日々になるなっていうのがあります。けど、たくさんの方が応援してくれるおかげで、くじけずに前を向いて一生懸命頑張れている。来年は、今年の自分をもっと超えられるように頑張ります」
絶対的な女王は慢心することなく、自身と向き合い今日の自分を超えていく。
佐藤が主導権を奪い、4番手に追い上げた尾崎睦が最終2コーナー手前からまくりを打つ。2番手の児玉に並んで直線でさらに踏み込むも2着。
「自分を信じてやろうと思っていたので、そこは良かったんですけど。(佐藤の)3番手に入りたかったですね。終わってみればですけど。そうすれば横まで並べたのかなって。6番(坂口楓華)の位置にはいたかった。勇気をもってまくりにいけたので、そこはいままでにはなかった自分の部分だと思う。一年間やってきたことは間違いじゃなかった。優勝以外は意味がないって言ったら良くはないと思うんですけど、優勝以外は意味がないと思っていた。優勝できなかったので、日々の積み重ねが足りなかったなって。もう少し見つめ直さないと」
尾崎のまくりを追いかけた久米詩は、最終バック過ぎには3車併走の真ん中。苦しいポジションになったものの直線でしぶとく伸びた。
「もうなにもできなかったですね。最初は(梅川)風子さんの後ろから運びたいなって思っていたので、落ち着いてはいたんですけど。ジャンぐらいでちょっと狂ってしまった。リカバリーをしようと思えば、ポイント、ポイントはあったと思う。けど、全然ダメでした。思い切りがなかったというか、迷ってばかりいました」