地元Vで神奈川初のGPチャンプ
郡司浩平
2度のガッツポーズでファンの声援に応えた郡司浩平は、湘南の空に高々と一本指を突き上げた。
「平塚のグランプリは2回出させてもらったんですけど、なかなか期待に応えられずに悔しい日々を過ごした。またこうやってチャンスをもらって、みなさんの前で優勝できたことは本当にうれしいです」
グランプリ史上初の地元選手の優勝。郡司自身も平塚でのグランプリを過去2度経験していたが、20年9着、22年3着と跳ね返されていた。それだけにこう言ってファンに感謝した。
「(競輪祭が終わってから)ここ1カ月、すごくさびしい気持ちで練習に励んでいた。けど、こうやって一人じゃないんだなって。1着が取れたのもみなさんのおかげです」
S級S班に返り咲いた今年だったが、G1戦線では思うような戦績が残せず今年のG1優出は6月の高松宮記念のみだった。ラインでの戦いをリードして、南関勢の中心に常にいた郡司だったが、グランプは地区ではただ一人になった。それでも今年は、年頭から勝ちにこだわり、徹する姿勢をみせてきた。グランプリの優勝を含めて、今年積み上げた42勝はグランプリメンバーでも断トツの数字だ。「今年一年間を振り返って、1着を取る走りをやってきたので、グランプリで今年の集大成を見せられるように」と、前夜祭でも語っていたように、大一番で有言実行を果たした。
レースは大方の予想通り、4車で結束した近畿勢が前団に構える。郡司は近畿勢の後ろ、3人の単騎選手のなかでは、一番前のポジションで集中力を研ぎ澄ました。
「(近畿勢が前で別線が来たところを)寺崎(浩平)君が先行態勢に入るんだろうなって。そこをワンチャンスしかないと。そこを逃さないようにと思っていた」
眞杉匠を寺崎が突っ張るが、眞杉も簡単には下げない。眞杉は近畿分断を図り、番手の脇本雄太と併走。隊列はグッと凝縮されてレースが流れる。単騎のなかで最初に仕掛けたのは、最後方にいた嘉永泰斗だった。
「レースが始まってからは、終始チャンスをうかがっていた。自分のなかで単騎っていうところもあって、仕掛けるタイミングが(最終)ホームであったけど嘉永君を見送ってしまった。そこでまず仕掛けられれば良かった。でも、そのあと冷静に対処できた」
嘉永の動きに最終ホーム過ぎに反応した郡司は、2コーナーで出切った嘉永の上を迷いなくまくった。
「最終ホームで嘉永を見送った時に、ヨシタク(吉田拓矢)とか、誰かに張られたら遅れちゃうなってところで、加速しながら嘉永を追えていた。誰かが来ても対処できる心構えはできていました。嘉永の後ろにハマってからは、余裕もあったので、バックでもう1回踏み上げられるような余力もありました。あとは、後ろに誰かが来ても、絶対に振り切るって気持ちだった」
抜群の加速で嘉永をとらえた郡司の後ろには、競輪祭で波乱を演じた阿部拓真がいた。それでも郡司の心が揺れることはなかった。
「後ろにアベタク(阿部)がいたのはわかったんですけど、そこだけには絶対に抜かれないと」
最後の力を直線で振り絞った郡司が、地元でのグランプリ制覇を完結させた。
「ゴールを駆け抜けてから、やっとグランプリを実感できた。それぐらい集中できてましたね」
初の賞金王にも輝いた郡司は、グランプリチャンプとして1番車のチャンピオンジャージをまとい26年をスタートする。
「来年、1番車として一年間を通して安定した成績を残したい。南関として底上げをして、もっともっとG1戦線でみんなで活躍したいですね」
一人で獲ったグランプリから、来年は南関勢みんなでのグランプリに。自身も昨年2月の全日本選抜から遠ざかっているタイトルを奪取して、いままで以上に南関地区を引っ張っていく。
周回中は単騎の選手が5、6、7番手を占める。郡司後位にいた阿部拓真は、最終ホームで9番手の最後方。腹をくくって郡司を追走して、2センター過ぎには出切って直線を迎える。郡司には半車、及ばずも、迫る吉田をしのいで2着に入った。
「スタートで出てみて郡司君の後ろになった。嘉永君よりもいい位置にいれるなって思った。前がどういう状況になっているのかわからなくて、赤板からジャンでペースが上がってキツかったです。もうこうなったら郡司君に頼るしかないなって。なんとか追走はできた。脚はいっぱいだったんですけど、夢をみました。初めての舞台でしたけど、できすぎじゃないですかね」
打鐘からは古性優作との併走で苦しい流れになった吉田拓矢だったが、最終2コーナー手前から嘉永のまくりにスイッチするように踏み込む。スピードの違う郡司、阿部にはのみ込まれたが、直線では2人との差を詰めた。
「もう感性に任せていこうっていう感じでした。キツかったですけど、悔しい。ちょっと苦しい展開になりましたけど。近畿とつぶし合いになってしまった。嘉永君もさすがの仕掛けでしたし、郡司さんも強かった。脚は残っていなかったんですけど、阿部さんだけは抜きたかった。郡司さんは抜けないと思った」