¥JOY×プロスポーツ記者が選ぶ極上バトル⑥ ~2010年立川記念決勝~

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浅井康太
2015年はグランプリ初制覇も成し遂げた
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成田和也
完璧な内容だったがVには届かず
想像の域を超えた記念制覇

 過去に数々の名勝負、名場面に巡り合ってきたが、最も想像の範囲を超えた栄冠は2015年1月の立川開設58周年記念の決勝戦だろう。
 中部勢は柴崎淳(三重・91期)の番手が同門の浅井康太(三重・90期)、さらに、加藤慎平(岐阜・81期)、三浦稔希(愛知・76期)の並びで4車が結束。強力な本線を形成したが、ここに、2012年のダービー王で"日本一のマーカー“と評されていた成田和也(福島・88期)が番手勝負を宣言したのだ。誰もが浅井vs成田のバトルに胸を躍らせ、注目度は一気に高まった。優勝候補の双璧が競ることで、車券の推理も困難を極めた。それはオッズにも表れており、2車単で10倍を切る組み合わせはなく、加藤-浅井の「交わしの交わし」が11.6倍で一番人気だった。
 
 レース結果を先に出そう。1着浅井、2着成田で決着したのだが、もちろん、競り合う者同士で決まったことが「想像の域の超えた驚き」ではない。余談になるが、若手記者の頃に同僚の先輩記者だったFさんが「競りの展開でも、決着が簡単について負けた方が(勝った方の)後ろに入ることが往々にある」と言って競る選手同士の車券を買っていた(あまり当たらない)ので、その買い方を「F(先輩の苗字)車券」と呼んでいたことを思い出す。
 
 話を戻そう。
 
 レースは、成田和也がパーフェクトに進めた。外競りで浅井に勝負を挑み、赤板の2コーナーで早々と番手を奪う。もちろん、浅井も黙っていない。打鐘の2センターから自身の位置を取り返すために追い上げる。だが、当時のヨコの技術では成田が一枚上であり、浅井は最終2コーナーで後退。ズルズルと車を下げていった。成田はさらにパフォーマンスを上げる。競りの決着を見極めた新田康仁(静岡・74期)が2コーナーまくりを打つが、ギリギリまで引き付けて2センターでブロック。弾かれた新田のあおりを受けて、その後ろにいた鈴木誠(千葉・55期)と岩津裕介(岡山・87期)も外へ浮かされた。最終4コーナーを回り、成田が背後でワンチャンスをうかがっていた加藤の中割りコースを締めながら柴崎を抜きにいったときに、誰もが成田の完璧なV物語が完結を迎えると思っただろう。
 
 ここから信じられないドラマが起こるのだ。言うまでもなく演者は浅井。最終2コーナーで競り負け、3コーナーまでズルズル車を下げていたにも関わらず、2センターで再び車を外に持ち出すと、ゴール前10メートルで成田の横に並び、最後は3/4輪もブチ抜いたのだ。

 過去に結果的に競り負けた選手が1着になることが全くなかったわけではない。だが、記念競輪の決勝というトップクラスが集る舞台で、あれだけの競りをしたにも関わらず、ハイスピードで流れる中で脚の状態を立て直して、ゴールまでのわずかな距離でコボー抜き。改めてダイジェスト映像で見ても、やはり驚きしかない。

レース映像はこちら→https://www.youtube.com/watch?v=dFaq0D2xuho

堀江鉄二記者

2020年5月14日 00時00分

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