五輪へのスタートライン
次代を担う若手の“オールキャスト”。しかしながら、終わってみれば一人だけ役者が違った。
「ヤンググランプリということで強いメンバーのなかで、自分の一番いい脚力の出し方ができた。それで優勝できてうれしいです」
打鐘では外に北井佑季がいて、包まれた形での8番手。後ろにはラインの山根将太しかいなかった。それでも立て直した3コーナー過ぎから、すかさず反撃に出た。
「ジャン前でちょっとかぶってしまったところがあった。その辺がもうちょっとスムーズに動けてたら、もっと余裕をもってレースができたのかなと。(犬伏湧也と仕掛けのタイミングが合ったように見えたが)僕としてはもう駆け始めていた。犬伏さんが出てきたようなタイミングになったので、犬伏さんのラインに乗るという選択はなかった。犬伏さんの前まで出るのが自分の仕事だと思って、前まで出ました。(犬伏との踏み合いで)出切れないかもしれないって思ったんですけど、そこは力と力をぶつけ合わすしかなかった。単騎の選手が飛んできても、そこは自力選手として譲れないところだなと思って戦いにいきました」
最終ホームを過ぎて先頭に立った犬伏に、太田海也が襲い掛かる。相手は別線ながらも、同じ中四国地区の犬伏。最後までグランプリ出場権を争った犬伏の抵抗を太田は力の違いでねじ伏せた。2コーナー過ぎに先頭に立った太田にラインの山根は踏み出して離れていた。単騎の志田龍星、北井佑季が直線で迫ったが、その影を踏ませることはなくゴールを駆け抜けた。
「(レース内容としては)優勝できているので、そういったところは評価したい。でも、もっと改善できるところもあるのかなって思うんですけど、勝ててうれしいです。レベルが上がるにつれて優勝できる機会もすごい減っているので、この優勝っていうのはとても自信につながる」
ナショナルチームでの活動もあり、競輪の出走機会が限られている太田にとっては初めてのグレード制覇。9月のアジア大会ではスプリント、チームスプリントの2冠に輝き、パリ五輪を迎える24年は競技が中心になる。
「(競技の方では)スプリントが自分のなかで得意な気持ちがある。でも、やっぱりスプリントでもケイリンでもしっかりメダルを獲れるような選手になりたい。(24年の2月に)オリンピック出場をかけたネイションズカップ第1戦に向かいます。このヤンググランプリも含めて、来年のネイションズカップへの段階だと思っているので、すごくいい弾みになりました」
ヤンググランプリはあくまで通過点。まずは五輪の大舞台に日の丸を背負い太田が世界に羽ばたく。
北井佑季は、最終バック付近でも8番手。2センターでは外に浮いたが、直線では中のコースを追い込んだ。
「(結果的に後方になってしまったが)立川はカントがあるので、2センターで外を踏むと膨れてしまうなっていうのは頭にあった。外を踏みながらでしたけど内が空いた。突き抜けたかったですね。(最終3コーナーの)あの時点で4番手ないし5番手にいられれば突き抜けられたと思いますし。位置取りとかもっとうまくできていれば。自分には(レース展開を)読む力がまだない。怖かったですけど、結果的にあまり当たらずに中割りにいけた」
打鐘4コーナーで犬伏を見失った上野雅彦は、最終バックで志田を前に見る4番手。直線で外を追い込んだ。
「(最終)ホームの(犬伏の)加速がすごくて、余裕はあって付いていけると思った。けど、志田さんが外にいて付いていけなかった。志田さんとからむよりもと思って切り替えて、(志田を)追っていった。でも、付いていけばまた展開が変わっていたと思うと犬伏さんに申し訳ない。3コーナーを回っても踏める感じがあったから2着はいけるなと。志田さんは抜けると思ったいた」