圧巻のまくりで賞金女王に
人気通りの独壇場。立川の長い直線も、他の6人にとっては反撃の手だてにはならなかった。
「攻める、攻めるって強い気持ちって言ってたんですけど、結構怖気づく部分もあった。けど、たくさんのお客さんからの声援で勇気をもらって、強いレースができた。グランプリという舞台は、自分の力だけで勝てる舞台ではなかったのですごくうれしいですし、(ファンの方々に)感謝を伝えたい」
後続に大きな差をつけてゴールを駆け抜けた佐藤水菜が、左の拳を冬空に突き上げてファンの声援に応えた。
道中は願ってもない3番手。「中団は大理想でしたね」と、笑みを浮かべて振り返った。打鐘を通過しても4番手以降の選手は動かない。2番手の尾方真生が仕掛けて主導権を奪取。最終ホームを迎えたが、絶好位は変わることはなかった。
「尾方選手が自力を出すだろうなってことは頭に置いていた。とにかく自分がそこの動きに焦って、せっかくのいい位置を失わないように。自分の位置を守りながら、最善のポイントで(仕掛けて)行けたと思います」
3度グランプリを制した児玉碧衣も、佐藤が3番手ではフリーズするしかなかった。あとはナショナルチームのトレーニングで磨き上げたスピードを繰り出すだけだった。
「(前の2人は)ずっと射程圏内に入っていた。届くかなって一瞬、不安になったりしたんですけど、しっかりと自分の行ける位置を確保していました。(まくりで抜け出してからは)自分の後ろに誰がいるかとか見え切れないところは、ビジョンで確認していた。それで自分が単独の先頭だなって。でも、なにがあるかわからないので、しっかりと踏み切ろうと思って、ゴールまで一生懸命踏みました」
佐藤のスピードには、すんなりと後ろに付けていた久米詩さえも置いていかれた。ナショナルチームでの活動でガールズケイリンの出走が限られていたなかでのグランプリ初制覇。賞金女王にも輝いた。
「(来年は競技の)シーズンが2月から始まるんですけど、世界との差は、まだまだ高い壁がある。スプリントでは自分より年下の子が(200mのタイムで)10秒2をマークしているので、そこにいち早くコンマ1でも縮めらるようにしたい。オリンピックで金メダルを獲って、ガールズケイリンに胸を張って帰りたいと思います」
競技者としては、五輪イヤーの来年は勝負の年。世界選手権のケイリン種目では21、22年に銀メダルを獲得しているだけに、五輪でのメダルの期待も膨らむ。ガールズケイリンでの女王の称号を携えて、佐藤が世界の頂を見つめる。
6番手からの一撃にかけた梅川風子は、直線で外を伸びて2着に入ったが佐藤を脅かすことはできなかった。
「サトミナ(佐藤)のレースコントロールがうまかった。サトミナを知っている分、動けなかった。レースが終わってからああすれば良かったとかあるけど、これがいまのすべてです。自分が悪い。レース中に思いつかなかったし、対応できなかった。自転車は伸びていない。2着じゃ意味がない。もっと団子状態になるかもと思っていたので、自分のミスですね」
児玉碧衣は、5番手で3番手の佐藤を見ながら周回を重ねる。最終3コーナーから踏み込んで前の久米は交わしたが、4度目のグランプリ制覇は遠かった。
「取れた位置からって考えていましたけど、後ろに坂口(楓華)さんと梅川さんがいたので、誰かが押さえに来たら合わせて動こうと思っていたんですけど。(結果的に誰も動かなかったが)だからと言って自分が動く勇気もなかったですし、あれだけ(佐藤に)車間を空けられてしまうと…。どうしたら良かったんだろう。(自分が)行ったら(佐藤は)合わせる気満々でしたし。結構感じは良かったんですけどね…」