このための、一年間
「今年一年間、どうやったら勝てるかを考えてやってきた。このグランプリにかけてました」
昨年はグレードレースを7V。しかしながら、今年はここまで優勝がなかった。それでもグランプリ(GP)の優勝を逆算して、“詰め将棋”ように着実に詰んできた浅井に焦りはなかった。GPチケットをかけた賞金争いにも早めにカタをつけ、初めてGPの舞台を踏んだ平塚から7年連続の出場で、思い出の地に帰ってきた。
「最高です。今年は結果っていう結果が残せてなかったので、最後に結果が残せてよかった」
最後の大勝負で今年初優勝。シャンパンファイトのあとのVインタビューが、今年の浅井にとっては初のお立ち台だった。一昨年、単騎で獲ったGPとは違うシチュエーション。深谷への信頼は揺るぎなく、その深谷が打鐘から出てレースを支配した。
「深谷君も落ち着いてホームで駆けていたし、これはまくりはキツいだろうなと。深谷君が落車したのは残念だけど、気持ちが伝わってきて、自分は勝てた」
6番手からアタックした三谷を不発に追いやると、3番手からまくり上げた平原も、深谷と息の合ったコンビネーションで阻んだ。
「ここで冷静にいられるように精神面も鍛えたし、落ち着いて考えられるのも、今年一年間で成長した部分だった。それが結果につながったのかなと思っている」
外の平原、新田のスピードが鈍ると、イチかバチかで中割りに出た諸橋愛にも対応。冷静沈着な立ち回りが優勝を生んだ。18年は2度目のグランプリチャンピオンユニフォーム、栄光の1番車で中部、そして輪界をリードしていく。
「やっぱり1番車っていうのは、競輪界で一番格好いいユニフォームだと思ってる。自分が一番格好いいぞっていうレースをみなさんに見せて、来年もグランプリに出られるように頑張ります。今年一年間、不甲斐ない結果だったんですけど、最後に優勝することができ、ファンのみなさんに感謝したい。競輪選手である以上、進化し続けるので、それを見続けてほしいと思っています」
わずか一度だけだが、今年は譲れなかったここぞの大一番。その優勝で賞金王にも輝いた。輪界の頂点を極めた浅井はまだ道半ば。これからも止まることのない進化を約束する。届かず3着の新田祐
思いのほか平原のまくりが伸びず、武田は最終2センターで浅井後位に入ってから外に持ち出す。落車のアクシデントもあって振られたが、懸命に立て直して2着に追い込んだ。
「最後の勝負どころまで我慢していたけど、我慢しすぎて車が出なかった。もうちょっと早めでもっていうもあるけど、そこら辺は難しい。落車して腰抜けになったっていうのもある」
「スタートでダメだと…」とは、1番車も周回中、まさかの8番手に置かれた新田。一度は動いたが、勝負どころでは再び8番手に陥る。新田のエンジンをもってしても、3着が精いっぱいだった。
「深谷君が掛かっていたし、このスピードなら三谷君は飛ぶだろうなと。飛んだところかその前に行くかを考えていた。でも、(重要なのは)そこではなかった」
唯一、3車のラインとなった関東勢。3番手を確保した平原は、車間を詰める勢いで最終2角からまくるも不発。力負けを認める。
「(深谷が)掛かってたから、結果的には(仕掛けて)行かない方が獲れたかもしれない。でも、自分のスタイルじゃないんで。あれで行けないんじゃ弱いだけ…」